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プロ野球

プレッシャーと戦うことを忘れた男がノーヒッターを達成するまで――大野雄大、復活の軌跡

氏原英明

2019.09.16

 大野は昨季に2段モーション解禁してから、自分の感覚がようやくフィットしてくるようになったと語っている。

「ここ数年間のビデオを見返した時に、すごく窮屈に投げているなと感じたんです。スムーズに投げられていないなぁと。その原因を探った時に、自分の身体の力を100%蓄えられていないまま、身体が前に出ていると気づいたんです。その影響で球の威力が違うんやろうなと。それで2段モーションにしたら軸足で乗れて、体重移動ができるようになりました」

 身体の軸を支える左足でしっかりと蓄えられたパワーが体重移動とともに右足へと伝えられ、その力を右足が受け止める。右足が蓄えられたパワーをストップする役割をして、それが上半身に伝わり、大野の腕は強く振れるようになった。

 大野は続ける。

「右バッターのクロスに決まっている球は僕の右足が突っ張っていることが多いんです。良くない時は、身体からの力が入っていなくて突っ張らない。左投手は右投手と違って、インステップしやすい。今年の僕は真っすぐからやや半歩開いているんですけど、右バッターのインコースにクロスするような球を軸として投げていくのが僕の求める投球であって、それができたら他の球も生きてきますし、勝てる投球やと思っています」
 大野は低めを突くタイプの投手ではない。ストレートを意識させた上でのワンバウンドの変化球は投げるが、ストレートは高めに強く投げる。これはデータ上でも、威力があるのは高めだと出ているからだが、それらは軸足でしっかり蓄えられることを起点としているのだ。

 今季が開幕した頃、大野がこれほどのピッチングを見せてくれると予想していた人は多くなかったはずだ。実際、彼自身もそうした視線を感じていたし、シーズン当初は高い意識を持っていなかったと認めている。

 ただ、好投を続けていくことで、周囲の視線は微妙に変わっていった。今季初完封を挙げた次の登板(5月15日DeNA戦)で、大野は6回11安打7失点と炎上した。理由は、周りの期待度が変わるのを過敏に感じ取ってしまったからだ。

 ここ数年の低調な成績が、プレッシャーと戦うことを忘れさせてしまったのかもしれない。大野は、そんな自分を変えていくことを目指した。

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