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プロ野球

プレッシャーと戦うことを忘れた男がノーヒッターを達成するまで――大野雄大、復活の軌跡

氏原英明

2019.09.16

「初完封をした時に、僕に対する見られ方が変わった。『大野だったら、今日の試合は勝てるんちゃうか』って。そんな周りの期待を感じながら投げていました。結果が出なかったんですけど、その大変さ、求められるものがそれまでと違った。今年はある程度、試合を作ってくれたらいいというのが僕に対する期待だったと思いますし、僕自身もそう思ってマウンドに上がっていました。6、7回まで投げるのがテーマだ、と。2試合連続で結果を求められるという立場を経験して、プレッシャーもありましたけど、やっぱり、投手としての価値はそこやなと思いました。勝利が計算できる、次回もまだ勝ってくれるぞと思ってもらえる。その中で勝てるようにしたいですね」

 プロに入ってかなり経つ選手、かつてエースを張っていた男の言葉とは思えない。ここの数年の不振で、大野はそこまで自信を失っていた。ノーヒット・ノーランは、文字通りどん底からのリスタートを目指す過程で生まれた大記録だったのだ。

 記録達成の直前、彼の背中には多くの期待が寄せられていた。だから、実際にノーヒッターを成し遂げた時、彼は身体いっぱいに喜びを表現して無邪気に喜んだのだろう。同時に、この重圧を乗り越えてこそ本物の投手なのだとも思ったはずだ。
 次回登板、大野に対して「ノーヒッターの後でどんなピッチングを見せてくれるのか」という視線が寄せられるだろう。6、7回を投げてくれればいいというシーズン前の期待とは段違いだ。
 
 しかし、大野雄大という投手は本来、周囲の期待や視線を一身に浴びながら、それでも結果を残すことができる投手であるはずなのだ。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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