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プロ野球

菅野対大野よりすごい? 2011年にダルビッシュと田中将大が演じた“究極の沢村賞争い”を振り返る

藤原彬

2020.11.10

 今も語り草となっているこの一戦は、平日開催にもかかわらずチケットは売り切れ、4万4826人の観衆が詰めかけた。試合は2回にダルビッシュが先制点を許したが、田中も4回に3失点。その後は2人ともスコアボードに0を刻み続け、互いに最後まで投げ抜く意地と意地のぶつかり合い。わずか2時間23分で決着し、ダルビッシュが13勝目(2敗)を手にした。

 敗れた田中だが、6月に続いて7月も月間MVPを受賞。8月27日のソフトバンク戦では歴代2位の1試合18奪三振を記録した。10月にはパ・リーグ史上初となるシーズン3度目の月間MVPを受賞し、後半戦だけで10勝(2敗)を挙げてダルビッシュを追い抜いた。統一球導入の影響があったにしても、防御率はリーグ史上2位の1.27と近代野球では信じがたい水準に達した。

 ダルビッシュは後半戦5勝4敗と運に恵まれなかったが、史上初の5年連続防御率1点台をマーク。全試合で7イニング以上を投げ抜き、28先発のうち14試合は2ケタ奪三振と「凄み」は田中をも凌駕した。
 
 2人はともにキャリアハイを塗り替えるとともに、先発投手のタイトルを2人で独占。沢村賞の選考基準7項目も、以下のようにすべてクリアした。

※( )はリーグ内順位
■25試合以上:ダルビッシュ 28 田中 27
■10完投以上:田中 14(1位) ダルビッシュ 10(2位)
■15勝以上:田中 19(1位) ダルビッシュ 18(3位)
■勝率6割以上:田中 .792(1位) ダルビッシュ .750(4位)
■200投球回以上:ダルビッシュ 232.0(1位) 田中 226.1(2位)
■150奪三振以上:ダルビッシュ 276(1位) 田中 241(2位)
■防御率2.50以下:田中 1.27(1位) ダルビッシュ 1.44(2位)

 沢村賞の選考委員長を務めた土橋正幸は「2名でという話も出た」が、40分もの激論の末に「競馬で言ったら写真判定。それも拡大しないと差が出ないくらい」の僅差で田中の初受賞を決めたのだという。

 投手にとっては最大の名誉とも呼べる沢村賞。昨年は該当者なしだったが、今年は大野と菅野のどちらが授かるのか、当時のように熱い議論が交わされそうだ。

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。
 

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