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プロ野球

最初から最後まで“異例”づくめだった奥川恭伸のデビュー登板。神宮の空気を変えた一夜の記録

勝田聡

2020.11.11

 一方、奥川はまだ1試合も一軍で投げていない。これから一歩目を踏み出す選手に対しての注目度としては群を抜いている。近年のドラフト1位選手と比較しても、17年の寺島成輝や(野手と投手の違いはあるが)18年の村上をはるかに凌駕していた。

 試合が始まってからも、ファンの視線はもちろん奥川に集中する。うっすら聞こえる周りの会話も奥川の投球内容に関してのものが多かった。SNSでも同様だった。ツイッターでは、「奥川くん」がトレンド入りしていたことからそれはよく分かる。

 残念ながら打ち込まれ、望んでいたような結果ではなかったが、降板の際に場内から大きな拍手が贈られたのは、「来年頼むぞ」の期待がたくさん詰まっていた証だろう。
 
 試合終了後のセレモニーでは高津臣吾監督に「来年に向かって非常に若手で有望な選手が今日先発しました。奥川!」と促され、異例の挨拶。ここでも視線を集めることになった。球場がどよめいたのは言うまでもない。

 その後、ライトスタンドへ向かって挨拶に移動する際は石川雅規の横を歩いていた。石川は身振り手振りを交えて何かを説いていた。石川も気にかけているのだろう。およそ20年間に渡ってチームを支えてきたエースから、これからの20年を支えていくであろう次代のエースへの魂の伝承。そんなやりとりではないかと想像する。

 ファンや監督、チームメートだけでなく、対戦相手からも注目を集めていた。佐々岡真司監督が、「来年、必ず出てくる投手」と言えば、最初の対戦打者となった鈴木誠也は「いい投手なのは間違いないですし、来年、再来年出てくるなと思う」とコメントしている。

 まさに球場全体が奥川の一挙手一投足に注目していたのである。

 結果は誇れるものではなかったかもしれない。それでもこの日一番の注目を集めていたのは間違いなく奥川だった。

取材・文●勝田聡

【著者プロフィール】
かつた・さとし/1979年生まれ、東京都出身。人材派遣業界、食品業界で従事し30代後半で独立。プロ野球、独立リーグ、MLBなど年間100試合ほど現地観戦を行っている。2016年から神宮球場でのヤクルト戦を全試合観戦中。

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