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プロ野球

巨人のクリーンナップトリオを“打点ゼロ“に封殺!ソフトバンク3連勝の裏に甲斐拓也の頭脳アリ

喜瀬雅則

2020.11.25

 また、岡本は第1戦の第1打席で、千賀滉大の内角球にバットをへし折られてファールフライに倒れている。その“イヤな感触”が残っているのを、甲斐は最大限に生かす。第3戦でも、坂本が三振に倒れた後の1回2死二塁で、150キロと153キロのストレートを立て続けに内角に決めて追い込むと、3球目の154キロを詰まらせてショートゴロに打ち取った。結局この日は三振と3つの内野ゴロに終わり、セの2冠に輝いた24歳の大砲は、その“らしさ”を全く出せていない。

 この日“ノーノー継投”を阻止して意地を見せた丸も、第1戦では4回無死一、二塁でダブルプレーに倒れ、第2戦の7回1死一、二塁の好機には空振り三振を喫するなど、甲斐によって完全に打線の“ブレーキ役”に仕立て上げられている。
 
 特に丸に対する甲斐のリードが光ったのは、第2戦の6回だ。5点リードの場面ながら1死一、二塁で丸を迎えると、工藤公康監督は好投の先発・石川柊太に代えて、左腕の嘉弥真新也を投入した。指揮官はその理由を「1本出れば打者は変わるとよく言われる。あそこはしっかりと切ることが大事」と強調したが、甲斐もその意図を理解した上で、嘉弥真に4球連続で外角のスライダーを要求。見事、空振り三振に仕留めた。

 工藤監督は3連勝を飾った立役者に甲斐を挙げ、「うまく変化球を使いながら、よく7回まで(ムーアを)引っ張ってくれた」とねぎらった。今シリーズは代名詞の“甲斐キャノン”を披露する場面がいまだなく、物足りない気がしないでもないが、それは巨人にほとんど出塁を許していない証拠でもある。これで、ポストシーズン15連勝、日本シリーズでは11連勝。1965~73年のV9巨人以来となる日本シリーズ4連覇へ向けた快進撃を支えているのは、まぎれもなく“甲斐の頭脳”なのだ。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)

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