おそらく、時間がかかったのはバッティングの方だろう。
根尾の体幹を生かしてスイングするためミートポイントが捕手寄りだ。そのため、スウィングスピードや振り負けない力が必要とされる。高校生の時に使用していた金属バットでが木製に変わった中でのアジャストはそう簡単ではない。
「ストレートが違いますよね。特に一軍レベルを経験されているピッチャーの真っすぐはなかなか前に飛ばなかったです。捉えきれないことがたくさんありました」
そう言っていたのは、ロッテのスラッガー安田尚憲だ。
今の時代、高校時代から木のバットを練習で使用して慣れている選手は少なくないが、プロのストレートは高校生とは質が異なる。木製バットへの適応に加えて、ストレートに対応しようとする難しさもあるのだ。
ストレートに対応しようという意識が強すぎれば、身体の開きを早くしてしまうだろうし、その逆の作用も起きる。根尾の場合はそこへ彼自身の独自のスタイルも重なり、プロへの適応に時間がかかったのだろう。
守備も、今や球界屈指の好守を誇るようになった京田と比べるとまだ大きな差はある。それでも、根尾ならではのプレーは随所に生きている。体幹を使うため、どんな体勢になってもスローイングがぶれない。ダイビングキャッチをした際の立ち上がりの速さも体幹で体を動かしているからで、その個性は今後の彼の持ち味になるだろう。
プロでの適性はショートよりセカンドの方があると見ているが、1年目はあえてショートに固定して、余計なことを考えさせないのも一つの育成法だ。その点では、ここまでの中日の根尾育成法は正しい方向性にあると考えていいのではないか。
デビュー戦は一つのゴロをさばき、打席では三球三振に終わった。
今後も小園との比較は続くだろうし、一軍定着が遅れれば、きっといろんな声も入ってくるだろう。だが、彼のスタイルがプロへのアジャストに時間がかかるものであることを考えれば、その個性が生かされたまま1年目の最後に一軍デビューできたことは一つの手応えになるはずだ。
今日のシーズン最終戦、先発出場も噂されるが、自身のプレースタイルを出し切れるかをテーマにしてほしいものだ。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
根尾の体幹を生かしてスイングするためミートポイントが捕手寄りだ。そのため、スウィングスピードや振り負けない力が必要とされる。高校生の時に使用していた金属バットでが木製に変わった中でのアジャストはそう簡単ではない。
「ストレートが違いますよね。特に一軍レベルを経験されているピッチャーの真っすぐはなかなか前に飛ばなかったです。捉えきれないことがたくさんありました」
そう言っていたのは、ロッテのスラッガー安田尚憲だ。
今の時代、高校時代から木のバットを練習で使用して慣れている選手は少なくないが、プロのストレートは高校生とは質が異なる。木製バットへの適応に加えて、ストレートに対応しようとする難しさもあるのだ。
ストレートに対応しようという意識が強すぎれば、身体の開きを早くしてしまうだろうし、その逆の作用も起きる。根尾の場合はそこへ彼自身の独自のスタイルも重なり、プロへの適応に時間がかかったのだろう。
守備も、今や球界屈指の好守を誇るようになった京田と比べるとまだ大きな差はある。それでも、根尾ならではのプレーは随所に生きている。体幹を使うため、どんな体勢になってもスローイングがぶれない。ダイビングキャッチをした際の立ち上がりの速さも体幹で体を動かしているからで、その個性は今後の彼の持ち味になるだろう。
プロでの適性はショートよりセカンドの方があると見ているが、1年目はあえてショートに固定して、余計なことを考えさせないのも一つの育成法だ。その点では、ここまでの中日の根尾育成法は正しい方向性にあると考えていいのではないか。
デビュー戦は一つのゴロをさばき、打席では三球三振に終わった。
今後も小園との比較は続くだろうし、一軍定着が遅れれば、きっといろんな声も入ってくるだろう。だが、彼のスタイルがプロへのアジャストに時間がかかるものであることを考えれば、その個性が生かされたまま1年目の最後に一軍デビューできたことは一つの手応えになるはずだ。
今日のシーズン最終戦、先発出場も噂されるが、自身のプレースタイルを出し切れるかをテーマにしてほしいものだ。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。