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プロ野球

【お股ニキ流アナライズ Vol.2】球界の勢力図を一変させる“破壊者”丸佳浩の凄み

お股ニキ

2019.11.09

加入1年目で巨人を優勝に導いた丸。成績のみならず、その姿勢までもがチームに好影響を与えた。写真:徳原隆元(THE DIGEST写真部)

加入1年目で巨人を優勝に導いた丸。成績のみならず、その姿勢までもがチームに好影響を与えた。写真:徳原隆元(THE DIGEST写真部)

 初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴 マネー・ボールを超える野球論』(光文社新書)が大反響を呼び、ツイッターのフォロワー数が2万5000人を超える「お股ニキ」氏の連載コラム。独自の野球観、卓越した分析力を誇る「お股ニキ」氏が、毎回、一人の選手を取り上げて徹底解剖していく。第2回は、FA移籍1年目で巨人を優勝に導いた丸佳浩。プレーだけではない、チームを、そして球界にも大きな影響力を及ぼす彼の真の実力に迫っていく。

 9月21日、優勝マジック2として迎えた巨人軍が位のDeNAに勝利して、5年ぶりのリーグ優勝を飾った。昨オフに広島からFA移籍してきた丸佳浩は、広島での3連覇に続いて4年連続でセ・リーグの頂点に立った。

 巨人のWAR合計は45.7に対して広島は36.7。丸佳浩のWARが4.9(21日現在)だから仮に丸が移籍していなかったら広島のWARが巨人を上回ることになる。野球は複雑であり、これが全てではないとは言え、丸の移籍がセ・リーグの動向に多大なインパクトをもたらしたのは事実であり、2年連続MVPのこの男の力は、リーグの行方すら左右するレベルであると言える訳だ。今回は、そんな丸の凄さについて迫ってみたい。
※WARの出典は1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.(https://1point02.jp/op/index.aspx)
 丸は多くの卓越した能力を持つ選手だが、私がその中でも最も関心し、また驚かされるのが「読み」と「割り切り」である。「野球は確率のスポーツ」という現実を、最も理解し体現している選手、とでも言えばいいだろうか。

 彼が試合中にベンチでメモをとる姿を見たことがある人は多いだろう。今はデータやスカウトからある程度、相手投手の傾向や球種、軌道などの情報は手に入るものの、実際に打席で見た投球の分析や癖、特徴に至るまでを細かく、他のどの投手のものと似ているといった内容までメモしているのだという。しかも、こうして蓄積してきた情報をチームメイトに惜しげもなく伝えることで、チーム全体として相手投手への対抗策を練りやすくしている。

 丸自身は、狙いを定めて追い込まれるまでは自分の体に向かってくるスライダーなどの変化球とストレートを狙っていて、落ちるボールには手を出さない。これはイチローなども指導した名打撃コーチ、新井宏昌氏の指導なのだという。

それゆえ、落ちるボールは苦手ではあるものの、追い込まれるまではある意味、“捨てて”見逃せるのである。際どいコースや自分が狙っていないボール、打てないボールは見逃すという割り切りで、丸自身は体が硬いから落ちるボールを見逃せると語っている。大きなヒッチをする独特の打撃フォームも、この体の硬さから来ているのだろう。この打ち方も合理的で、年々長打力を増してきた。昨年に広島で39本塁打を放った際には、好球必打というより「好球強打」で強く叩くことで長打を量産していた。

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