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プロ野球

17年の最優秀中継ぎ投手、岩嵜翔が完全復活――モイネロと森につなぐ“7回の男”に返り咲いた日本シリーズ

喜瀬雅則

2020.11.26

「打者が嫌がるのは何か、ということなんだよ」と同コーチは、岩嵜に問いかけた。結果を意識するあまり、知らぬ間に投球のメカニックが狂っている。これを“矯正”していった。高い位置から、右腕を振り下ろす感覚を取り戻す。横ではなく縦から。その意識付けとともに、高い位置から一気に投げるイメージで、投球フォームも見直していった。両腕を振りかぶり、モーションを起こしていく際、軸となる右足の曲げ具合も抑え気味にした。

「動きと自分の感覚がはまってきたんです。でも、自分の中では、これまでと完全に真逆でしたね」

 岩嵜が自らの“改造”の成果を明かしてくれたのは、9月11日のウエスタン・リーグ、対阪神戦後のことだった。この試合で岩嵜は、最速153キロのストレートで2回を無安打3奪三振に抑えた。ちょっとした裏話を明かすと、私が岩嵜を取材している時、たまたま通りかかった阪神の平田勝男二軍監督が、岩嵜に声をかける場面があった。
 
「岩嵜、すごいよ。どうなっているの? この前、対戦したときは打ったのに、今回は手も足も出なかった。ウチの選手じゃ練習にもならなかったんちゃう? なんで、二軍におるのよ?」

 実は、8月19日の同カードでは1回3失点と、岩嵜は打ち込まれていたのだ。それだけに、わずか1ヵ月での変貌に、敵将も驚きを隠せなかった。意識を変え、メカニズムを見直すことで、岩嵜はプロ13年目にして新たな“進化”を遂げた。

 岩嵜は10月2日に一軍へ再昇格すると、11試合に登板して計10回を6安打、自責点2、16奪三振と圧巻の投球を見せた。さらに、ロッテとのクライマックスシリーズ以降は3試合に投げて1点も与えていない。8回のモイネロ、9回の森唯斗へつなぐ「7回の男」の座へ舞い戻り、岩嵜にとってはまさしく「完全復活」を告げる日本シリーズとなった。来季、日本シリーズ5連覇を新たな目標とするソフトバンクの中で、彼がどのような投球を見せてくれるのかが、今から楽しみだ。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)

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