否応なく、世間の好意的でない声は聞こえてくる。しかし、「大輔には毎回こう言っているんです、『周りの声は関係ない! お前の野球人生なんだ』。それだけ言われるということはやはり関心があるということ。興味を持たれなかったら、(プロ野球選手として)終わりだと思っています」
先に述べた通り、斉藤の野球人生の後半は怪我のリハビリに費やされた。マウンドで戦いという強い気持ちの一方で、その肉体は言うことを聞いてくれなかった。だからこそ、この言葉には彼の強い想いが乗せられている。
「身体が動くのであれば、そこに闘志が残っているのなら……自分ができなかったから、余計にあがいてほしいんですよね」
プロ野球選手の“引き際”というのは難しい。一般社会であれば一つ「定年」という目安はあるものの、勝負の世界には存在しない。力がないと判断されれば、20代前半の選手でもクビになることもざらだ。本人がどんなにプレーしたくても、球団から求められなければ、そこに居場所を求めるのは難しい。しかし斉藤は、ベテランに限らず、将来に悩むすべての選手に“あがき続けてほしい”という。
「もし、本人が勝負したいという気持ちがあって、そこに時間があるのなら、周りが何と言おうと、僕は勝負すべきだと思います。一度きりの人生、周りの声は関係ないです。おそらく、どんな選手でも最後は、多少の悔いは残ると思います。それをどれだけ小さくできるかの作業だと思うんです。大好きな野球なのであれば、自分が納得するまでやれれば、野球を好きなままで終われると思います。僕は野球を嫌いで終わってほしくないんです。好きで終われたら、最高に幸せですよね」
私は最後に訊いてみた。「和巳さんは、野球を好きで引退できましたか?」
一息ついて、斉藤は笑顔を見せた。
「僕は本当に、当時のフロントの方に感謝しかありません、納得するまでやらせていただきました。まぁ、今は野球をやりたくないんですけど(笑)。でも、ここまでやらせてもらっても、野球が好きでいられているのは、僕の財産です。だから、みんなにも頑張ってほしいです」
本当に、斉藤和巳の野球人生は幸せだったのだと感じさせられる。彼は決して晩節を汚していなかった。最後まで戦えた男だからこそ、「一度きりの人生、周りの声は関係ない」との言葉が響いてくる。そしてこれは、野球界にとどまらないメッセージではないだろうか。
取材・文●新井裕貴(SLUGGER/THE DIGEST編集部)
先に述べた通り、斉藤の野球人生の後半は怪我のリハビリに費やされた。マウンドで戦いという強い気持ちの一方で、その肉体は言うことを聞いてくれなかった。だからこそ、この言葉には彼の強い想いが乗せられている。
「身体が動くのであれば、そこに闘志が残っているのなら……自分ができなかったから、余計にあがいてほしいんですよね」
プロ野球選手の“引き際”というのは難しい。一般社会であれば一つ「定年」という目安はあるものの、勝負の世界には存在しない。力がないと判断されれば、20代前半の選手でもクビになることもざらだ。本人がどんなにプレーしたくても、球団から求められなければ、そこに居場所を求めるのは難しい。しかし斉藤は、ベテランに限らず、将来に悩むすべての選手に“あがき続けてほしい”という。
「もし、本人が勝負したいという気持ちがあって、そこに時間があるのなら、周りが何と言おうと、僕は勝負すべきだと思います。一度きりの人生、周りの声は関係ないです。おそらく、どんな選手でも最後は、多少の悔いは残ると思います。それをどれだけ小さくできるかの作業だと思うんです。大好きな野球なのであれば、自分が納得するまでやれれば、野球を好きなままで終われると思います。僕は野球を嫌いで終わってほしくないんです。好きで終われたら、最高に幸せですよね」
私は最後に訊いてみた。「和巳さんは、野球を好きで引退できましたか?」
一息ついて、斉藤は笑顔を見せた。
「僕は本当に、当時のフロントの方に感謝しかありません、納得するまでやらせていただきました。まぁ、今は野球をやりたくないんですけど(笑)。でも、ここまでやらせてもらっても、野球が好きでいられているのは、僕の財産です。だから、みんなにも頑張ってほしいです」
本当に、斉藤和巳の野球人生は幸せだったのだと感じさせられる。彼は決して晩節を汚していなかった。最後まで戦えた男だからこそ、「一度きりの人生、周りの声は関係ない」との言葉が響いてくる。そしてこれは、野球界にとどまらないメッセージではないだろうか。
取材・文●新井裕貴(SLUGGER/THE DIGEST編集部)