捨て身に近いような戦いに切り替え、第2戦、松田宣浩をスタメンから外したのだ。
右翼手に福田を入れ、中村晃を左翼、左翼だったグラシアルを三塁に回したのだった。そして、この起用がチームを活性化せたのである。
1回、今季、美馬に対して8打数ノーヒットだった柳田悠岐がソロ本塁打を放つと、3回には、その柳田の出塁から美馬に16打数3安打だったデスパイネが2ラン本塁打。4−4の同点の4回裏に、福田が勝ち越しのソロ本塁打を放ったのだった。
松田のスタメン落ちからチームが一つの方向へ向かう。
勝つことに専念して、それまでの数字を忘れるくらいのパフォーマンスを発揮したのである。
1勝1敗で迎えた3戦目には、中村晃をスタメンから外したソフトバンクは、1−1の接戦で推移した終盤戦を競り勝ち、モノした。ベテランの内川聖一が2打点の活躍。また、1点ビハインドの4回裏の内川の適時打では、二塁走者のデスパイネが巨体を揺らしながらも、好走塁を見せて同点のホームを踏んでいる。
投げても第2戦では、シーズン終盤に復帰した石川柊太が中継ぎに入って、先発とリリーフをつなぐ潤滑油になると、試合終盤は、ルーキー甲斐野央、モイネロ、森唯斗が役割を果たした。3戦ではそこに若い高橋純平が加わり、逃げ切って見せたのである。
泥臭く1勝をもぎ取る姿に、ソフトバンクというチームの底力はある。
何度日本一に輝いても、彼らは勘違いをすることがない。取材の対応など立ち振る舞いでは王者の風格は見せても、どんな選手でも泥にまみれることができる。「この1勝」を掴むために。
ファイナル進出を決めたインタビューで、工藤公康監督はこう言った。
「所沢に行って西武と勝負したいという強い思いを持って、後悔しないように決断した。苦しい決断をしなきゃいけなかったんですけど、素晴らしい結果が出てよかった。選手たちがよくやってくれました」
苦しい戦いではあった。
ただ、裏を返せば、それだけ楽天もグッドルーザーの戦いぶりを見せたということの証でもある。
過去の中でも指折りのクライマックスシリーズたった。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
右翼手に福田を入れ、中村晃を左翼、左翼だったグラシアルを三塁に回したのだった。そして、この起用がチームを活性化せたのである。
1回、今季、美馬に対して8打数ノーヒットだった柳田悠岐がソロ本塁打を放つと、3回には、その柳田の出塁から美馬に16打数3安打だったデスパイネが2ラン本塁打。4−4の同点の4回裏に、福田が勝ち越しのソロ本塁打を放ったのだった。
松田のスタメン落ちからチームが一つの方向へ向かう。
勝つことに専念して、それまでの数字を忘れるくらいのパフォーマンスを発揮したのである。
1勝1敗で迎えた3戦目には、中村晃をスタメンから外したソフトバンクは、1−1の接戦で推移した終盤戦を競り勝ち、モノした。ベテランの内川聖一が2打点の活躍。また、1点ビハインドの4回裏の内川の適時打では、二塁走者のデスパイネが巨体を揺らしながらも、好走塁を見せて同点のホームを踏んでいる。
投げても第2戦では、シーズン終盤に復帰した石川柊太が中継ぎに入って、先発とリリーフをつなぐ潤滑油になると、試合終盤は、ルーキー甲斐野央、モイネロ、森唯斗が役割を果たした。3戦ではそこに若い高橋純平が加わり、逃げ切って見せたのである。
泥臭く1勝をもぎ取る姿に、ソフトバンクというチームの底力はある。
何度日本一に輝いても、彼らは勘違いをすることがない。取材の対応など立ち振る舞いでは王者の風格は見せても、どんな選手でも泥にまみれることができる。「この1勝」を掴むために。
ファイナル進出を決めたインタビューで、工藤公康監督はこう言った。
「所沢に行って西武と勝負したいという強い思いを持って、後悔しないように決断した。苦しい決断をしなきゃいけなかったんですけど、素晴らしい結果が出てよかった。選手たちがよくやってくれました」
苦しい戦いではあった。
ただ、裏を返せば、それだけ楽天もグッドルーザーの戦いぶりを見せたということの証でもある。
過去の中でも指折りのクライマックスシリーズたった。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。