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プロ野球

捨て身のソフトバンクに、昨年日本一の底力を見た。ベストゲームの楽天はグッドルーザーの戦い

氏原英明

2019.10.08

CS1st第2戦から松田宣浩がスタメンを外れた。写真:徳原隆元

CS1st第2戦から松田宣浩がスタメンを外れた。写真:徳原隆元

 捨て身に近いような戦いに切り替え、第2戦、松田宣浩をスタメンから外したのだ。
 右翼手に福田を入れ、中村晃を左翼、左翼だったグラシアルを三塁に回したのだった。そして、この起用がチームを活性化せたのである。

 1回、今季、美馬に対して8打数ノーヒットだった柳田悠岐がソロ本塁打を放つと、3回には、その柳田の出塁から美馬に16打数3安打だったデスパイネが2ラン本塁打。4−4の同点の4回裏に、福田が勝ち越しのソロ本塁打を放ったのだった。

 松田のスタメン落ちからチームが一つの方向へ向かう。
 勝つことに専念して、それまでの数字を忘れるくらいのパフォーマンスを発揮したのである。

 1勝1敗で迎えた3戦目には、中村晃をスタメンから外したソフトバンクは、1−1の接戦で推移した終盤戦を競り勝ち、モノした。ベテランの内川聖一が2打点の活躍。また、1点ビハインドの4回裏の内川の適時打では、二塁走者のデスパイネが巨体を揺らしながらも、好走塁を見せて同点のホームを踏んでいる。
 
 投げても第2戦では、シーズン終盤に復帰した石川柊太が中継ぎに入って、先発とリリーフをつなぐ潤滑油になると、試合終盤は、ルーキー甲斐野央、モイネロ、森唯斗が役割を果たした。3戦ではそこに若い高橋純平が加わり、逃げ切って見せたのである。

 泥臭く1勝をもぎ取る姿に、ソフトバンクというチームの底力はある。

 何度日本一に輝いても、彼らは勘違いをすることがない。取材の対応など立ち振る舞いでは王者の風格は見せても、どんな選手でも泥にまみれることができる。「この1勝」を掴むために。

 ファイナル進出を決めたインタビューで、工藤公康監督はこう言った。

「所沢に行って西武と勝負したいという強い思いを持って、後悔しないように決断した。苦しい決断をしなきゃいけなかったんですけど、素晴らしい結果が出てよかった。選手たちがよくやってくれました」

 苦しい戦いではあった。
 ただ、裏を返せば、それだけ楽天もグッドルーザーの戦いぶりを見せたということの証でもある。

 過去の中でも指折りのクライマックスシリーズたった。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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