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プロ野球

「野球小僧になろう」。現役時代に実績のないオリックスの水本勝己・新ヘッドコーチに期待される指導力<SLUGGER>

北野正樹

2021.02.16

水本ヘッドのタイミングの良い声かけは、選手にも響いているようだ。写真:北野正樹

水本ヘッドのタイミングの良い声かけは、選手にも響いているようだ。写真:北野正樹

 観察力に驚いたというのは、3年目の荒西祐大だ。キャンプイン初日、ブルペンで「腕が少し上がったな。それでいいぞ」と声をかけられた。入団当初のスリークオーターから横手投げに変わり、オフから再び腕を上げるフォームに取り組んで来た。「以前のフォームも知っていたから、違いに気づいてくれたと思う。早くから映像などのデータを見て研究されていたのでは。(ヘッドがそこまで)気にかけてくれていてくれるのはうれしい」と荒西。

 そうした水本ヘッドの目配りや気配りに対し、中嶋監督は「2軍で(監督同士として)戦い、僕と野球観が同じ」と全幅の信頼を置く。

 「野球小僧になろう。楽しくやろう」。練習の区切りなどに選手を集め、こう語りかける。今は厳しい競争の世界に中にいるが、始めたころは野球が面白くて仕方がなかったのではなかったか。その時の気持ちを思い出し、楽しく野球に向き合おう――という呼びかけだ。さらには、練習中のプレーに「頭を使って考えろ」と人差し指で自分の頭を指し、選手に合図を送る。

「なんとか、一人ひとりの意識を変えていかないといけない。現実は2年連続のドベ(最下位)だから、選手が自分たちで感じ、変わるためにはどうしたらいいかを考えてほしい。そうすればチームは自然に強くなる。一度勝てば(勝ち癖がつけば)、強くなる。そこまでいくのにどうするか。選手には1か月間、頭を使い勉強して悩んでほしい。それが体に出てくるようになれば」
 
 これまで、おとなしい選手が多いと言われてきたオリックス。いい内容の野球をしていても、「勝ち方を知らない」(安達了一)ため、勝ち切れず、おとなしくならざるを得なかった。勝つ喜びを何度も味わうことで自信がつき、ミスも少なくなってチームが自然と明るく前向きになっていくというイメージなのだろう。

 2年連続開幕投手を務めたエース・山岡泰輔は「これまでのオリックスに足りなかった部分だと思う。野球を漠然とするのではなく、考えて、考えて一つ一つのプレーをしっかりとやろう、野球のことだけを考えることで、そこから変えていこうということだと思う」と、水本ヘッドの理念を理解している。

 1992年以降、自身が2軍監督に就任した2016年まで24年間、カープが優勝出来なかった時代を知る水本ヘッド。遠回りでも、選手の意識改革が同じように24年間優勝から遠ざかり長期低迷するオリックスを変える大きな力になると信じている。

文●北野正樹(フリーライター)

【著者プロフィール】
きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。

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