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プロ野球

【山岡泰輔のアマチュア時代】田口麗斗の好投を霞ませた「しまなみ球場の衝撃」。ドラフト前の取材でも驚きのエピソードが

西尾典文

2021.02.13

山岡が見せた投球は、ボールの勢い、コントロール、変化球、全てが別格だった。写真:産経新聞社

山岡が見せた投球は、ボールの勢い、コントロール、変化球、全てが別格だった。写真:産経新聞社

 毎年新たなスターが出現するプロ野球の世界。しかし年俸が数億円を超えるような選手も、必ずしもプロ入り前から高い評価を受けてきたわけではない。そんなスター選手のアマチュア時代の姿を年間300試合現地で取材するスポーツライターの西尾典文氏に振り返ってもらった。今回はパ・リーグを代表する先発投手として活躍している山岡泰輔(オリックス)を取り上げる。

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 今やリーグを代表する投手となった山岡だが、同世代の中で評判となるのが早かったわけではない。瀬戸内高でプレーした高校時代は、松井裕樹(桐光学園→楽天)が代表格で、広島県内でも田口麗斗(広島新庄→巨人)の方が先に話題となっていた。3年夏の広島大会に足を運んだ時も、田口のついでに山岡も見られれば良いという感覚だったが、実際の投球を見て認識を改めさせられた。

 舞台は2013年7月21日のしまなみ球場。第1試合では田口も評判通りの投球を見せたが、その後の試合に登板した山岡は更にそれを上回る投球を見せた。田口が先発で6回を投げたのに対して、山岡はリリーフで3回という短いイニングだったこともあるが、それを差し引いてもボールの勢い、コントロール、変化球、全てが山岡の方がワンランク上だと感じさせるものだった。その後の広島大会決勝での延長再試合、甲子園、U18W杯の快投で山岡は一気に世代を代表する投手となっていくが、それも全く不思議ではなかった。
 
 東京ガスに進んだ後も3年間で7試合ピッチングを現場で見たが、物足りなさを覚えたことは一度もなかった。何度も繰り返し試合を見ている選手は徐々に欠点が気になることが多く、山岡のような例は極めて珍しい。わずかに注文として残っているメモは、クイックをもう少し早くしたいというだけ。いつ見ても抜群の躍動感がありながらストレートも変化球もしっかりコントロールできるピッチングは見事だった。

 ドラフト前には雑誌の取材で長く話を聞く機会があったが、フォームに関しては何も教わったことはなく、子どもの頃から特に意識せずに今のような投げ方ができていたと聞いて驚いたのもよく覚えている。またその時は社会人日本代表の海外遠征帰りで、現地での食べ物が口に合わず、体重が60キロくらいになってしまったと話していたが、その話しぶりや体つきとグラウンドで投げるボールとのギャップにも驚かされた。

 もちろんきちんとしたトレーニングを積んでいるからプロでも活躍できているとは思うが、天賦の才というものを強く感じさせられた投手でもある。これからもその才能を更に大きく開花させて、長くファンを楽しませる投手になってくれることを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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