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プロ野球

藤浪晋太郎が開幕投手を託された必然。奪三振率「12.60」が示す“かっこいい”ドクターKへの期待

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.03.09

 中継ぎ配置換え後の3先発は15イニングを投げて自責点ゼロ、21三振。奪三振率は驚異の12.60に達し、セ・リーグ平均(7.70)を上回るのはもちろん、昨季NPB1位の千賀滉大(ソフトバンク/11.08)をも凌駕する数字だった。もちろん少ないイニング数とはいえ、19年に千賀が樹立した奪三振率のプロ野球記録「11.33」を塗り替える可能性があるとしたら、そのポテンシャルを含めれば藤浪しかいないのではないか。

 そして研鑽も惜しまない。キャンプでは頻繁にトラックマン(弾道測定機器を差し、球速はもちろんリリースポイントやボールの回転数、回転軸などの情報も見ることができる)のデータで投球をチェックし、真っすぐとカットボールの中間球“スラッター”やスプリットの精度を高める姿を見せた。さらに、今季から高校時代を思い出すワインドアップも導入。大きく振りかぶる姿に、「かっこいい」と誰よりも“メロメロ”だったのが他でもない矢野監督だった。
 
“ニュー藤浪”の今季の実戦登板は12回を投げて1失点。3月5日のソフトバンク戦では4回3安打2四球無失点、ピンチの場面もあったが以前のように崩れることなく封じ切り、最速158キロ、149キロの高速スプリットで絶対王者を抑え込む姿は、まさにエースのそれだった。

 今シーズンはストレートの割合を減らし、昨季被打率.107のカットボール(スラッター)の割合を増やす予定だという。空振りを取る球種だけでなく、ゴロを打たせて長打のリスクを減らすという意味でも確かな選択に思われる。

 持っている資質は間違いなく球界トップクラスだった。しかし、それを生かせない時期にもどかしさを感じたファンも少なくなかっただろう。ただ、もがき苦しんだことで、天才に新たな気づきをもたらした。「知」と「経験」が融合した藤浪に期待しているのは、阪神ファンにとどまらないのではないか。9年目の再ブレイクに、注目していきたい。

構成●新井裕貴(THE DIGEST編集部)
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