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プロ野球

リーグ連覇の西武はなぜ2年連続でCS敗退したのか。 指揮官も嘆いた「選手層」の根深い問題

中島大輔

2019.11.10

ベテランの域に差し掛かった十亀は物言う立場になった。若手の練習姿勢について苦言を呈している。写真:徳原隆元

ベテランの域に差し掛かった十亀は物言う立場になった。若手の練習姿勢について苦言を呈している。写真:徳原隆元

 野手以上に深刻なのが、今季リーグ最低の防御率4.35に終わった投手陣だ。

「今井はもったいないですよ。あんなにポテンシャルがあるのに」

 梅雨入りの少し前、そう指摘していたのが十亀剣だ。
 高卒3年目の今井達也は、十亀の目にはキャッチボールが雑に映るという。実際に目を凝らしてみると、十亀や榎田大樹のように「キャッチボールは投球練習の一貫」という意識を持っているわけではなく、肩慣らしのために行なっているように感じられた。

「実戦の中で投げていて(横振りになるのは)自分でも分かっています。ずっとそういう形でやってきてしまっているので、なかなか直すのは難しい」

 今井が自身の課題を口にしたのが、4月6日の日本ハム戦で今季初勝利を挙げた後だ。特に走者が出ると投球の間をうまく作れず、身体が横振りになる。ストレートがシュート回転し、変化球が抜けやすくなる。今井は昨年から投球フォームを固める必要性を感じていた一方、同年6月中旬から先発ローテーションの一角として回り、調整優先になって課題に取り組む時間がなかった。2018年9月17日のソフトバンク戦の前、翌年を見据えてこう話している。

「一軍と二軍のバッターの差を感じることが多くありました。シーズンが終わって感じたこととか、足りないところを自分なりにまとめて、絞っていきたいです。まだまだ1年間、投げられる体ではないので、体づくり的なところですね。それが段々、野球のパフォーマンスにもいい方向に向くと思うので」

 3年目を迎えた今季はチーム最多の135.1回を投げ、高いポテンシャルを見せた一方、7勝9敗、防御率4.32と物足りない数字に終わった。毎試合のように投球フォームが異なっていたのは、技術がまだ未熟の証だった。
 同時に、試行錯誤していた裏返しとも言える。

 今井は今季、カーブの球速を10km落とした。メジャーリーグでは速いカーブが主流になってきた一方、今井は“あえて”遅くして緩急をつけようとしている。自分で考えて試行錯誤できるのは、150km超のストレートを投げられるのと同じで、プロ野球選手として優れた能力だ。

 しかし、昨季からの課題はまるで解消できず、2020年に持ち越しとなった。

「まだまだですね、山本君に比べたら」

 今年6月28日のオリックス戦で今井は序盤に苦しんだものの、8回1失点、被安打6、与四球4と好投を見せた。それでも黒星がついたのは、相手先発の山本由伸がプロ入り初完封(被安打5、与四球2)と、今井をはるかに上回る投球内容を見せたからだ。

 今井と山本はともに1998年生まれの21歳。前者は甲子園優勝投手でドラフト1位、後者は投手を本格的に始めたのが高1の秋でドラフト4位。それがプロ入りから3年の月日が経ち、山本は21歳では史上6人目の最優秀防御率に輝くなど、両者の立ち位置は大きく変わった。

 なぜ、今井は伸び悩んでいるのか。

 最たる点を挙げると、まだ一軍の先発ローテーションで回る技術も体力もないうちから、首脳陣が目先の勝利にこだわり、起用し続けてきた影響が大きい。悪いフォームで投げていると、今井も認めるようにクセになる。今季のCSファイナル2戦目、3回途中6失点に終わった試合では身体が横振りになってシュート回転し、変化球が抜けるといった今井の課題がすべて出た。モニター越しに見ながら、「故障しなければいい」と思ったほど、投球フォームがグチャグチャだった。
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