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高校野球

【センバツ】エースで4番の“二刀流”、1試合16塁打の大記録…アマ野球ライターが「衝撃を受けた野手」5人とは?

西尾典文

2021.03.17

 残りの2人は迷ったが、あえてその後プロに進まなかった選手を選んでみた。1人目が2006年に出場した金城長靖(八重山商工・現沖縄電力)だ。この年の八重山商工はエースの大嶺祐太(現ロッテ)に注目が集まっていたが、3番を打ち、投手としても140キロを超える金城も間違いなくチームの中心だった。

 初戦の高岡商戦では左打席からレフトポール直撃の一発を放ち、続く横浜戦ではこの大会の優勝投手となったサウスポーの川角謙(元東芝)から今度は右打席でレフトスタンドへ運んでみせた。170cm、72kgという小柄な体格ながら、そのフルスウィングは迫力十分で、夏の甲子園でもバックスクリーンに叩き込んでいる。

 高校卒業後は社会人野球の沖縄電力に進み、入社15年目となった今年もその打棒は健在。先日に行なわれた東京スポニチ大会でも3試合すべて4番で先発出場し、打線の中心として活躍している。
 
 もう1人が2009年に出場した平本龍太郎(報徳学園・元JX-ENEOS)だ。その打棒が爆発したのが、8番で出場した2回戦の今治西戦。第1打席でレフトへのツーランを放つと、その後の4打席で単打2本、三塁打2本の固め打ち。そして二塁打が出ればサイクルヒット達成となる第6打席では、この日2本目となるソロホームランをレフトスタンドへ叩き込んだのだ。

 試合前は正直、注目している選手ではなかったが、この日の平本はバットを振ればヒット、長打になる雰囲気が終始漂っており、俗に言う“ゾーン”に入っている状態のように見えた。この試合でマークした1試合16塁打という記録は、4打席連続ホームランを放ってようやく並ぶものであり、今後も破られる可能性は極めて低いだろう。

 平本は5番に打順を上げた次の中京大中京戦でも3安打をマーク。1大会通算21塁打という記録も残している。その後の立教大、JX-ENEOSでもプレーを見る機会はあったが、どちらかというと安定した守備が光るタイプの選手であり、この大会の活躍はやはり甲子園という舞台だったからなせた業だったのかもしれない。

 今大会はどちらかというと投手に注目選手が多いが、今回紹介した選手のように、いきなり甲子園で覚醒する選手も過去には存在している。今年も驚きのパフォーマンスを見せてくれる野手が登場することを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
 

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