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高校野球

“機動破壊”のその先へ。打撃強化でバージョンアップした健大高崎が示す「チームのあるべき姿」<SLUGGER>

氏原英明

2021.03.21

 決して、機動力を捨てたわけではない。11年夏の初出場時から醸成してきた「走力」にさらなる強みを加えることで、新たなステップへ向かうということだろう。

 高校野球では、一度、確立されたイメージに固執してしまうケースが多い。しかし、それだけではチームも、個人もそれ以上成長することはない。これまで醸成してきたものをさらに昇華させるだけでなく、そこに新たなテーマを加える。突き詰めていく要素が増えれば増えるほど、チーム力が上がる。これこそ、組織として通るべき道なのだ。

 戦い方を変えたのは攻撃面だけではない。もともとは一人の投手に頼りがちだったが、今は複数投手の育成に力を入れている。これも、過去の失敗を教訓にした変化だ。

「甲子園では再試合がありますので、それを想定したチーム作りをしてきました。複数の投手をつくるようになったんです。12年のセンバツでうちはベスト4に入ったのですが、その際、エースだった三木(敬太)を一人で投げさせたんです。すると、その後、故障して夏に投げられないということがあって、その時から変わりましたね」
 
 対戦校を圧倒した"機動破壊"からの「脱皮」、「成長」、「進化」、「バージョンアップ」……。いろんなフレーズが浮かぶが、それほど、今大会の健大高崎の戦いは興味深い。

「走るだけのチームって弱いと思います。それだけでは勝てない」

 そう語っていたのは、17年WBCでの青木宣親(現ヤクルト)だ。当時の侍ジャパンは打てるチームでもあったが、機動力や小技を駆使するスモール・ベースボールこそが「日本らしい」と考える無期が強かった。12年からメジャーリーグでプレーしていた青木は、そんな風潮を制するかのようにそう答えたのだった。

 同年のWBC準決勝で、侍ジャパンは打てずにアメリカに敗れた。

 走力はチームにとって大事なピースだ。だが、打ち勝つ力はチームをさらに上のステージへ導くために最も必要な要素なのである。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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