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高校野球

背番号17が放った大会第1号本塁打。昨秋はメンバー外だった東海大菅生・鈴木悠がやってのけた大仕事〈SLUGGER〉

氏原英明

2021.03.24

 この日のホームランもかなりの芸当だった。聖カタリナの右腕・桜井頼之介のスライダーに体が開きそうになりながら、耐えて振り抜いた一発だった。

 もっとも、スライダーを狙うことはチームとしての徹底事項でもあった。

 若林監督が桜井攻略のポイントを明かす。

「昨年秋の四国大会の準決勝、決勝のビデオを見まして、桜井投手はストレートを待ちながらスライダーを打つのはかなり難しい投手だなと感じました。試合前にスライダーを狙っていくように話をしました。鈴木も、千田(光一郎)もスライダーをよく仕留めてくれた」

 さすが元プロの指揮官といったところだろう。高い対応力を選手に求めるのではなく、一つの球種から攻略ポイントを探っていく。「スライダーを打つことができれば、投げる球がなくなりますから」。3回には、千田が鈴木に続けとばかり、同じくスライダーを捕らえて豪快な一発を叩き込んでいる。
 
 2本のホームランは、指揮官の狙いが功を奏しての一発だった。

 甲子園のような大舞台では、2ケタの背番号をつけた選手がシンデレラ・ボーイになることが珍しくない。2015年のセンバツでは、優勝した敦賀気比の背番号17・松本哲幣が準決勝の大阪桐蔭戦で、史上初めてとなる2打席連続満塁弾を放つ活躍を見せた。

 鈴木悠は次戦以降へ向け、こう意気込んだ。

「甲子園でホームランを打ちたいとずっと思っていて、実現できたのはとても嬉しい。今日のホームランは切れるかきれないかの打球で、イメージしていたホームランとは違った。次はもっと安心してベースランニングできるようなホームランを打ちたいです」

 今大会初本塁打をマークした東海大菅生の背番号17。これからの活躍も楽しみにしたい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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