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MLB

オールスター開催地変更は“際どい政治判断”?MLBコミッショナーの危うさ【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】

豊浦彰太郞

2021.04.21

 もしマンフレッドが今回、球団経営者のコンセンサス形成を図っていたら、到底この段階での声明発表には至らなかったろう。選挙法改正を黙認する態度を取れば球界内外のリベラル派から、球宴開催地の変更を表明すれば保守派からの非難は免れない、という立場だったのだ。

 したがって、マンフレッドは「これがベスト」という決断を下したのではなく、冴えない2つの選択肢から比較的マシな方を選んだ、ということだろう。立場上の損得勘定を吟味した、極めて政治的な判断だった。どっちに転んでも反対派がいる以上、単独での決断は必然だった。

 今回の一件に限らず、マンフレッドには独断が目立つ。一連のサイン盗み問題でのアストロズへの処罰もその典型だった。

 この辺りは、前任コミッショナーであるバド・シーリグと大きく異なる。おそらくそれは、シーリグは自身もブルワーズの元オーナーだったということが関係している。シーリグは常にオーナーたち、その中でも特に弱小球団の利益を重視した。

 ブルワーズがスモールマーケット球団だったこともあるのだろうが、それ以上にオーナー会議での承認を取り付けて自らの戦略を推進していくにはヤンキースの一票もパイレーツのそれも多数決上はまったく同じ影響力を持つことを認識していたからだろう。
 
 また、マンフレッドはニューヨーク出身でハーバード・ロースクールで学んだ弁護士という典型的な東部のエスタブリッシュメント。中古車販売業で財を成したシーリグとは根本的にタイプが異なる。

 シーリグはコミッショナー時代もオーナーたちと同じ“人種”だったが、マンフレッドは必ずしもそうではない。オーナーたちとの関係にはそれなりの緊張感があると考えるべきだろう。

 際どい政治判断を繰り返すマンフレッドは、将来シーリグのように任期を全うし、ハッピーリタイアを迎えることができるだろうか。オーナーたちの利益を軽んじているとして、92年に事実上解任されたフェイ・ビンセント(しかも、その首謀者がシーリグだった)の二の舞となるリスクもあるのでは……というのは少々考えすぎか。

文●豊浦彰太郎

【著者プロフィール】
北米61球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。ただし、会社勤めの悲しさで球宴とポストシーズンは未経験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。
 

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