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「球界で最も楽しい選手」ワイルド&セクシーな魅力を持つハビア・バイエズって誰?【MLB珍獣図鑑】

2020.04.13

ダイナミックかつ確実性に優れた守備も売り。19年は、平均よりどれだけ多くのアウトを取ったかを示すOAAで、内野手リーグトップの+19を記録した。(C)Getty Images

ダイナミックかつ確実性に優れた守備も売り。19年は、平均よりどれだけ多くのアウトを取ったかを示すOAAで、内野手リーグトップの+19を記録した。(C)Getty Images

 セクシーと言えばバイエズは、かつて『ESPNマガジン』の名物企画「Body Issue」で一糸まとわぬ見事なヌードを披露して話題になった。タトゥーもバイエズの自慢だ。左腕には16年の世界一を記念して入れたカブスのロゴ、胸には大きく「BAEZ」の文字、首の後ろにはMLBロゴ。他にも両親の名前やプエルトリコの旗、ライオンなどさまざまなタトゥーが彫られているが、バイエズが最も誇りにしているのは、左肩に刻まれた妹ノエリーの顔だろう。

 1歳年下のノエリーは二分脊椎という先天性の難病を抱えて生まれ、当初は生後数時間の命と診断された。しかし、彼女は強靭な生命力の持ち主だった。2日後、今度は余命1週間と言われたが、それも乗り越えた。バイエズ一家はノエリーにより良い医療を受けさせるため、05年にプエルトリコからフロリダへ移住。バイエズはプロ入りの際に得た契約金で、ノエリーの車椅子が出入りできるようカスタマイズされたミニバンを買った。ノエリーは母親や他の兄たちとそのミニバンに乗り、マイナーでプレーするバイエズを応援するため全米を旅した。14年のバイエズのメジャー初昇格を見届けたノエリーだったが、15年4月に21歳で生涯を閉じた。「彼女は決してあきらめちゃいけないことを教えてくれた」。バイエズのバイタリティあふれるプレースタイルは、その教訓を忘れていないからかもしれない。

 
 昨年までカブスの監督だったジョー・マッドン(現エンジェルス監督)は、バイエズの将来性について「外角のボール球に手を出さなくなったら、マニー・ラミレス級の打者になれる」と言うが、少なくともエンターテイナーとしてはすでにマニーと肩を並べていると言っていい。実際、17年には名物コラムニストのジョー・ポズナンスキーからは「MLBで最も楽しい選手」に認定され、18~19年はカブスで唯一、2年連続でオールスターに選ばれた。今や人気面では、リゾーや16年MVPのクリス・ブライアントを凌駕しているとの声すらある(ちなみにマッドンは、これについて、「リンゴかポールかジョンかジョージを選ぶようなものさ」と絶妙な例え)。

 18年は初のタイトルとなる打点王を獲得。また、どれだけ勝利に貢献しているかを示すWAR(Wins Above Replacement)はリーグ9位の5.8を記録した(Baseball Reference版)。19年もリーグ10位の6.0。両年ともリーグトップにはやや届かなかったが、どれだけファンを魅了しているかを示す「Fun Above Replacement」という指標がもし存在したら、ぶっちぎりの両リーグトップになるはずだ。

文●久保田市郎(スラッガー編集長)

※『スラッガー』2018年9月号より加筆修正のうえ、転載


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