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プロ野球

“格差”が交流戦を面白くする!セ・12年ぶりの勝ち越しに見た「リーグ間対決」の機運【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】<SLUGGER>

豊浦彰太郞

2021.07.01

 いざ始まってみると、交流戦は予想通りファンの支持を集めたが、セが勝ち越したのは、これまでは09年の一度だけ。DH制の有無の影響かは分からないが、ずっとパ・リーグ優勢の状態が続いた。すると、主にセ・リーグの側から「交流戦はそろそろ終わりにしていいのではないか」という声も上がるようになった。

 しかし、セの負け続けの傾向が日本シリーズでも同様となり、「セ・パ格差」が取りざたされるようになってからは話が変わってきた。特にここ2年、日本シリーズではソフトバンクが巨人をいずれも4連勝で一蹴。これによって、セの側に「これではマズイ」という機運が相当高まったと言えるだろう。

 09年以降、両リーグはコミッショナー事務局の下に統合され、リーグ会長職も廃止されたが、運営面では依然として足並みが揃っているとは言えない。11年の東日本大震災後の開幕日程に関する不協和音、昨年のコロナ禍でのクライマックスシリーズ開催の有無はその代表例だ。しかし、両リーグに対抗意識が残っていることは、ファンにとって必ずしも悪いことばかりではない。
 
 交流戦の成績はそのままペナントレースにも反映されるが、これ自体を切り取って順位を競うのはMLBにはないNPB独自のものだ。彼の地では13年に両リーグ15球団制となり、毎日いずれかの球団がインターリーグを行なうようになった。その結果、コンテンツとしてのインターリーグの魅力は、ヤンキース対メッツのようなご当地対決を除いて衰退した。功罪合い半ばするとは言え、両リーグにまだ対抗意識が残っているNPBでは、一定期間に集中して開催し、順位を競う交流戦は大事にすべき企画だろう。

 昭和の昔、プロ野球の構成は「巨人とそれ以外」であり、パ・リーグに至っては存在自体がブルースだった。「黒い霧事件」の影響で骨抜きになった西鉄も、日本シリーズで王貞治(巨人)に被弾しうずくまった山田久志(阪急)も、ロッテのジプシー移動も、「10.19」もブルースそのものだった。

 しかし平成に入ると、パは球団配置の劇的な変更により、地域密着型のビジネスモデルを構築した。イチローやダルビッシュ有、大谷翔平などの世界的スターも輩出し、セと対等に近い人気を誇るようになった。そんな経緯も踏まえると、「パが圧倒し、危機感を持ったセが目の色を変える」図式となった交流戦は一層魅力的になったと感じる。

文●豊浦彰太郎

【著者プロフィール】
北米61球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。ただし、会社勤めの悲しさで球宴とポストシーズンは未経験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。
 
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