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侍ジャパン

選手への厚い信頼が仇になる可能性も…侍ジャパン金メダルへの最大のカギは稲葉監督の決断力?【東京五輪】

氏原英明

2021.07.27

 2016年、第4回WBCの開催前年の秋に行われたテストマッチで、メキシコ代表が山田と筒香嘉智(現ドジャース)の打席で大胆なシフトを敷いてきた時には驚いたものだ。取材で調べたところによると、二人の打球方向がしっかりと分析されていた。筒香に至ってはゴロのケースとフライのケースと両面まで細かくチェックされていた。

 テクノロジーが発達し、情報も簡単に取得できて、その分析も進んでいる。あれほど大々的にテストマッチを開催したとなれば、対戦国の侍ジャパン対策はかなり進んでいると想定して戦わなければいけない。

 短期決戦でありがちな、特定の選手がブレーキとなった時のフレキシブルな戦い方が稲葉篤紀監督に求められる。

 稲葉監督の指揮官としての長所は情熱だ。2年前のプレミア12では対戦国のほとんどがベストメンバーでなかったにもかかわらず、頂点に立つことを誰よりも欲し、そして、優勝を決めた時には人目をはばからず涙を流した。
 
 指揮官の熱量は選手への信頼へと昇華して、好循環を生んできた。しかし一方で、選手を信頼しすぎるがあまり、一度決めた起用にこだわりすぎてしまう側面も見え隠れする。エースは田中将大、4番は鈴木誠也、クローザーは山﨑康晃、ショートは坂本勇人といった具合に、一度決めてしまうとそこから離れられなくなってしまうところもあるのだ。

 今回の代表選出で、明らかにコンディションに問題を抱えている菅野智之(巨人)や中川皓太(巨人)を選出したのも、その一面だろう(2人は結局、出場辞退を余儀なくされた)。故障明けの千賀滉大(ソフトバンク)を追加招集したことも然りだ。

 2006年の第1回WBCでは、準決勝の韓国戦で不振のため先発から外れた福留孝介(中日)が7回に代打で登場して勝ち越し本塁打を打ったことがあった。第2回WBCでは、クローザーが安定しなかったところにダルビッシュ有(パドレス)を据えたこともあった。短期決戦では、状況に合わせて、随時戦略を変えていかなければいけない。

 先にも書いたように、先発投手陣の充実は今の侍ジャパンの強みだ。ある程度ゲームを作ってくれるだろうが、試合が僅差で推移した時の継投策をどう作り上げていくかは課題になる。今季の状態の良さからいえば、プロ野球記録の39試合連続無失点を樹立した平良海馬(西武)や、新人ながら圧巻の投球を見せている栗林良吏(広島)がクローザー候補だ。その中で、稲葉監督就任以降も代表皆勤の山崎康晃(DeNA)の抑え起用にこだわり続けるかは一つのカギになるだろう。
 
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