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高校野球

手の内を知る者同士だからこそ――センバツに続いて好勝負を演じた神戸国際大付と北海<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.16

 一方、春の苦い経験に奮起したのが、この日、先発した神戸国際大付の阪上翔也だった。

 春までエースナンバーだった阪上は、センバツの北海戦も先発していたのだが、昨秋に痛めた右ヒジの状態が万全ではなく2回途中で降板。この試合にリベンジを期していた。

 阪上は言う。「春は自分が思うようなピッチングができていなかったので、この夏は自分が投げて打って勝ちたいと思っていました。春に比べればできたと思う」。

 阪上は5回を5安打1失点。ストレートの最速は146キロを計測、右打者にはスラッター、左打者にはスプリットを投げ込んで的を絞らせなかった。5回1死一、二塁から三塁手のグラブを弾く適時打を浴びたものの、しっかりとゲームメークができたのは春からの成長だった。

 打線が相手エースの木村に襲いかかり、さらに阪上が好投で流れを作る。序盤の試合の主導権を握ったのは神戸国際大付だった。
 
 しかし、5回以降、木村が粘りのピッチングを見せ始めると、試合は膠着状態に。神戸国際大付は6回から阪上からエースナンバーの楠本晴紀にスイッチ。これはセンバツと同じ継投でもあったが、その後も一進一退の攻防が続いた。

 青木監督はなんとか引き離しにかかろうと7回には先頭の山里の二塁打の後、3番の阪上に犠打を命じるもあと一本が出ず。8回にはヒットのなかった松尾優仁に変えて、左打者の関悠人を代打に送ったが、どちらも実らなかった。

 青木監督は言う。
「木村くんはうちの中軸に関しては厳しい攻めをしてきました。それでも、何とか打ち崩そうとしましたが、ここというところで1、2点が取れなくてもつれた試合になった」。

 守勢に回った神戸国際付だが、代打の関をそのままセンターに置き、逃げ切りにかかった。8回裏には1死二、三塁のピンチを招くも無得点で切り抜けると、9回は3人で仕留めて、2対1で逃げ切った。最後はセンバツと逆の展開であったが、何とか勝ちきったのだった。

 青木監督はセンバツを含めた2試合の意義をこう振り返る。

「何度も春のビデオをも見たし、『この選手はこういう特徴があるな』と僕自身は考えたし、選手たちも、木村くんにはこういう風に攻められている、だから、こういう対応をしないといけないとダメだとしっかり考えるようになっていた。いい意味でしのぎを削り合えたのは、この2試合から得られたことだと思う」

 敗戦した北海にとっても意義深い戦いになったに違いない。

 木村はこう振り返った。

「センバツでは力が発揮できなくて悔しい甲子園だった。今日は負けてはしまったけど、自分たちの100%を出すことはできたので、野球人生にいい経験になると思います」

 珠玉のリベンジマッチ。2試合の経験を大きな糧に、神戸国際大付と北海の選手たちはそれぞれの道を歩んでいく。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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