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MLB

【杉浦大介のNYレポート】1か月で立場が逆転したメッツとヤンキース。10月の主役はやはり“悪の帝国”?<SLUGGER>

杉浦大介

2021.08.30

 故障者続出に加え、8回以降に逆転される手痛い負けを繰り返し、一時は“呪われている”とまで評されたチームが、7月26日以降は25勝5敗、8月14日からは破竹の13連勝を記録した。すでにアストロズと並ぶリーグ2位タイの勝率であり、ワイルドカードでのプレーオフ進出が濃厚と思える位置にまで浮上してきた。

 トレード期限にアンソニー・リゾー、ジョーイ・ギャロと左の強打者2人を獲得したことが一つの転機になったことは間違いない。右打者偏重の打線に左のスラッガーが加わり、それまで弱点だった一塁、レフトという2つのポジションも埋まった。リゾー、ギャロとも新天地で大爆発しているわけではないが、チームを取り巻くムードを一変させたことは間違いない。途中補強には、フロントから選手へ「優勝を諦めたわけではない」というメッセージを送るという側面もあるからだ。

 そのメッセージが届いたか、8月はアーロン・ジャッジ(打率.330、7本塁打、OPS1.021)、ジャンカルロ・スタントン(.325、8本塁打、OPS1.079)、ルーク・ボイト(.309、5本塁打、OPS1.023)と主軸がそろって復調。中でもやはりジャッジの充実は大きい。
 
 アーロン・ブーン監督も「(ジャッジは)現在ベストのプレーをしている。身体的にもいい状態だし、準備の段階から集中できている」と主砲の働きを絶賛していた。13連勝中も2点差以内の勝利が8試合と、メッツとは対照的に接戦で強さを発揮している背景には、ジャッジのようなチームリーダーの存在が大きいのだろう。

 7月中旬頃、なかなか波に乗れないチームにファンは業を煮やし、ヤンキー・スタジアムは殺伐とした雰囲気だった。試合後の記者会見がお通夜のような空気だったこともあった。そんな苦境を経験したことも、かえってプラスに働いているのかもしれない。

「多くの接戦を経験してきたおかげで、選手たちは緊張感のある状況でも快適にプレーできるようになった」

 ブーン監督の言葉通りなら、さらにプレッシャーが増すポストシーズンでもヤンキースは怖いチームになるだろう。『ESPN.com』の最新パワーランキングでもア・リーグ2位まで急浮上している。

 今秋もニューヨークのファンを喜ばせるのは、やはりメッツではなくヤンキースなのか。大事な時期にタイミング良く調子を上げてきた“悪の帝国”には「運命のチーム(The Team of Destiny)」となりそうな雰囲気を漂わせ始めている。

文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。

 
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