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プロ野球

プロ野球“ファーム沼”の住民たち/前編ーー朝5時半起床で球場へ。“沼”にどっぷりハマったファンの生態

村岡範子

2021.09.12

 同じく主婦のAさんは「グッズにサインをもらいたくて」という理由でファームの球場に来たのがきっかけだった。コロナ禍の現在では難しいが、選手との距離感が近く、気軽にファンサービスが受けられるのは確かにファームならではの魅力だ。Aさんの場合、試合を多く見るうちに応援する選手の数が増え、今では日本ハムだけではなく他の球団にも"推し"がいる。特に「育成で頑張っている選手を見ると、球団問わず応援したくなる」そうだ。

「職場の上司からタダ券をもらえたので、とりあえずどんなものか見に行ってみようと」というきっかけだったのが会社員のYさん。もともと野球好きで、一軍の試合にもよく足を運び、外野席で大声を出して応援していた。だが、ファームでは近い距離で静かに見られることが逆に新鮮だった。試合に集中することで野球の細かいルールや面白さに気付き、沼にハマっていった。
 
 現在の鎌スタはコロナ禍の影響で練習見学が有料となっているが、以前は無料で外周から見学ができた。練習中に選手同士の会話が聞こえてきて、そのやりとりに思わず笑ってしまったり、試合だけでは分からない姿を知ることもできた。そんなプレー外の姿を見て、新たに“推し”の選手が増えることもある。“推し”が怪我をした時は別メニューをこなす姿を見つめ、日々メニューが増えていく姿に回復を感じる。

 そんな姿に言いようのない嬉しさを感じながら、"沼"の住人たちは今日もファームの球場に足を運ぶのだ。
(後編に続く)

取材・文●村岡範子

【著者プロフィール】
むらおかのりこ。1983年生まれ。軟式野球チームの監督だった父の影響で小学2年からプロ野球ファンになる。大学上京後、チアリーダーとなり、Jリーグクラブの公式チアリーディングチームのメンバーを務める。2018年から二軍観戦にハマり、可能な限り球場へ足を運ぶ。19年にスポーツサイトでNPB担当ライターを経験し、現在はフリーで活動中。

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