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大谷翔平が“9年越しに”拓いたパイオニアとしての扉。日本で、アメリカで二刀流を目指す選手を作り出す契機に

THE DIGEST編集部

2021.10.22

レッドソックスの強肩外野手バーデューゴも二刀流に挑戦。その影響は大谷からスタートした。(C)Getty Images

レッドソックスの強肩外野手バーデューゴも二刀流に挑戦。その影響は大谷からスタートした。(C)Getty Images

 バーデューゴは今季がレギュラー定着2年目の25歳、森木に至ってはプロ入り前の選手。数年前なら、「おいおい何を言ってるんだよ」と周囲の目は冷ややかなものだったかもしれない。だが今は違う。球界最高峰の舞台でシーズンを通して成功した男がいるからだ。

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 もちろん、「二刀流は球界最高のアスリート・大谷だからこそできた」という声に対して否定できる材料もない。何より、あの大谷ですら、日本ハム時代を含めても2016年と今シーズン以外は二刀流がフル稼働したと言えるシーズンはないのだから、それだけ難しいことは言うまでもないだろう(16年もマメの影響で投手としては2か月投げていない)。

 しかし、「二刀流」という選択肢を持った選手が続いていく――「0」から「1」を作り出したという大きな一歩を示したことが、大谷が今季成し遂げた大きな“価値”だったのではないだろうか。「成功/失敗」という尺度はなく、「ある/ない」という可能性の提示――。
 
 2012年11月2日、大谷翔平は日本ハムとの面談を行なっていた。花巻東高の大谷は、同年のドラフトで目玉とされた大物だったが、ドラフト会議前に高校卒業に渡米する意思を表明して大きな話題を呼んだ。それでも日本ハムは1位で指名。この日が2度目の指名挨拶となった。

 その際、大谷は「高校生からは初めてなのでパイオニアとしてやっていきたい。メジャーで長くやりたい」と語り、入団への難色を示した。しかし、その後に日本ハムは二刀流としての育成や日本を経てメジャーに行くことが、最終的に大谷のキャリアにとってプラスになるという綿密なプレゼンを行ない、その気持ちを翻意させることに成功している。

 結果として、大谷は「高卒即メジャー」という形でのパイオニアにはなれなかった。しかし今、「二刀流」というパイオニアとして、あり得ないとされてきた投打両方で活躍するという道を作っているのである。

「大谷君へ。夢は正夢。誰も歩いたことのない大谷の道を一緒につくろう」

 栗山英樹監督は、先の2度目の面談の際、この言葉が書かれたボールを大谷へ送ったという。あれから9年、大谷は誰も歩いたことのない道をつくり、彼の後に続く選手を生み出すきっかけになった。

 なぜ今シーズンの大谷が「史上最高のシーズン」とも称賛されるのか。単純に個々の成績だけを見れば、彼より優れた選手はいた。しかし、そうした数字を超えた部分。まさにフリーマンが言う、「扉」を開いた偉業が、唯一無二の価値だからに他ならない。

構成●THE DIGEST編集部

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