専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

ヤクルト優勝を語るなら「この試合」! 神宮ヤクルト主催試合5年間皆勤賞のライターが選ぶ“至高の5試合”<SLUGGER>

勝田聡

2021.10.27

【塩見泰隆の痛恨のトンネルにもチームは崩れず】 
・10月21日/広島戦/●ヤクルト7-11 広島〇 


 甲子園2連戦を1分1敗で終え、マジック3で本拠地・神宮球場に戻ってきた。広島に先制されたものの、ビッグイニングを作ってエース・大瀬良大地を攻略。6対3と3点リードで終盤戦に突入した。しかし7回、無死一、二塁から宇草孔基に遊撃の横を抜ける痛烈な打球をセンターへ飛ばされる。満塁のピンチ……かと思われた。 

 だが、猛チャージした塩見泰隆が痛恨の捕球ミス。打球は無人の左中間を転がっていき、打者走者の宇草まで生還する実質的なランニング本塁打を献上してしまった。同点となった後も広島の攻撃を食い止めることができずこの回7失点を喫し、敗戦を喫した。観客席の静まり返る様子は、いつもの敗戦とは明らかに違うものだった。  

 塩見の捕球ミスは、1986年のワールドシリーズ第6戦で生まれた“世紀のトンネル”が頭をよぎった。シリーズ成績を3勝2敗で王手をかけたボストン・レッドソックスは、68年ぶりの世界一までアウト3つまで迫っていた。しかし、一塁手のビル・バックナーが後逸してサヨナラ負け。続く第7戦も敗れ、レッドソックスの悪夢は2004年まで続くことになった。 

  あまりに痛すぎるミス。その後の試合にも大きな影響を及ぼしかねなかった。それでも、高津臣吾監督は「負けること、ミスを恐れてグラウンドに立つなんて絶対にしてほしくないし、全力でプレーしてくれたらそれでいい」と試合後に檄を飛ばした。これでみんな吹っ切れた。 
 
【原樹理が石川雅規に見えた日】 
・10月24日/巨人戦/〇ヤクルト 6ー4 巨人● 


 ヤクルトは後半戦に入ってから初の3連敗と、マジックを点灯させてから足踏みをしていた。一方の阪神は順調に白星を積み重ねている。万が一、この日も負けると優勝に暗雲が立ち込める重苦しい雰囲気。そんな大事な試合で輝いたのは先発の原樹理だった。投げては6回途中3失点、打っては走者一掃の適時二塁打で3打点。二塁ベース上では両手でガッツポーズを作り感情を爆発させた。これでマジック2とした。 

 前回の優勝時にマジックを点灯させた試合(2015年9月27日の巨人戦)で、石川雅規が投打に輝きを放った試合を思い出した。当時の石川、そして今回の原もともに前回の優勝直後のドラフト1位(石川は自由枠)という共通点がある。優勝直後にもっとも欲しいと思われた投手が優勝を手繰り寄せた。そのストーリーがたまらない。 

【著者プロフィール】 
かつた・さとし/1979年生まれ、東京都出身。人材派遣業界、食品業界で従事し30代後半で独立。プロ野球、独立リーグ、MLBなど年間100試合ほど現地観戦を行っている。2016年から神宮球場でのヤクルト戦を全試合観戦中。 
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号