今から2年前、「世界一にならないといけない選手」として、大谷について評していたのがイチローだった。自身の引退会見、日本史上最高の野球選手とも言える存在が、熱を帯びながら語ったこの言葉が、改めて反芻されてくる。
イチローは大谷の二刀流について、あるシーズンは打者として本塁打王、次のシーズンはサイ・ヤング賞といった大胆すぎる提言を行なった。そして、「そんなことを(普通は)考えることすらできない。でも、翔平はその想像をさせるじゃないですか、人に。この時点で、明らかに人とは違う選手であると思うんですよ」と、真剣な面持ちで口にした。
そして、今シーズンの大谷は、イチローが「考えることすらできない」とした領域に足を踏み入れつつあった。最終盤まで本塁打王レースのトップに立ち、7月以降はコントロールが劇的に改善されて、サイ・ヤング賞クラスの投球を披露した。しかも、同時にだ。
シーズンが夏場を迎えた頃、「今季の大谷は史上最高のシーズンなのではないか?」との声が聞こえ始めた。確かに、投打の両部門でこれだけ完成度の高いプレーを見せたのは、あのベーブ・ルース以来のこと。しかも、よりハイレベルとされる現代野球において、ともにオールスター級の活躍する選手がいるなど、誰も想像できなかった。
しかし、これは大谷に対して”失礼”なのではないか、と思い始めた。なぜなら、稀代の天才自身が、今シーズンを「来シーズンにおける最低ライン」と位置付けているのだから。
向上、貪欲、飽くなき探求心。
今季の活躍は本当に心躍るものだった。こんなプレーは今後見ることができないとすら思っていた。しかし、大谷は満足しない。自身が描く「一番の選手」になるまでは。シーズンは終わったばかりだが、早くも来シーズンの大谷を見ることが待ち遠しい限りである。
構成●新井裕貴(THE DIGEST)
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そして、今シーズンの大谷は、イチローが「考えることすらできない」とした領域に足を踏み入れつつあった。最終盤まで本塁打王レースのトップに立ち、7月以降はコントロールが劇的に改善されて、サイ・ヤング賞クラスの投球を披露した。しかも、同時にだ。
シーズンが夏場を迎えた頃、「今季の大谷は史上最高のシーズンなのではないか?」との声が聞こえ始めた。確かに、投打の両部門でこれだけ完成度の高いプレーを見せたのは、あのベーブ・ルース以来のこと。しかも、よりハイレベルとされる現代野球において、ともにオールスター級の活躍する選手がいるなど、誰も想像できなかった。
しかし、これは大谷に対して”失礼”なのではないか、と思い始めた。なぜなら、稀代の天才自身が、今シーズンを「来シーズンにおける最低ライン」と位置付けているのだから。
向上、貪欲、飽くなき探求心。
今季の活躍は本当に心躍るものだった。こんなプレーは今後見ることができないとすら思っていた。しかし、大谷は満足しない。自身が描く「一番の選手」になるまでは。シーズンは終わったばかりだが、早くも来シーズンの大谷を見ることが待ち遠しい限りである。
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