横浜時代は佐々木主浩、中日では岩瀬仁紀と、球史に残る守護神とバッテリーを組んできた谷繁氏は、クローザーというポジションの難しさを強調する。
「たかが1イニングと思われるかもしれませんが、抑えはかなりのプレッシャーというかかってくるポジションです。先発投手の勝ちや、野手の勝利打点も、下手をすれば1回で全部壊れてしまう。それを新人が1年間やり通したというのは、これはもう評価せざるを得ないですよ」
では、セイバーメトリクスの観点からはどうなのか。データスタジアムでアナリストを務める佐藤優太氏は次のように指摘する。
「単純に勝利貢献度WARで比較するなら、新人王は牧でしょう。栗林のWARが2.2なのに対し、牧は5.7と倍以上の差をつけています」
これは多くのファンにとって予想外だろう。では、なぜこれほどの差になるのか。佐藤氏によれば、ここで大事なのは「質と量」だという。
「栗林の『質的貢献』は申し分ありませんが、『量的貢献』にあたる投球イニングは52.1回にとどまります。チーム全体の投球イニングが1253.2回ですから、栗林が占める割合は4.2%に過ぎません。対して、牧はチーム全体の5340打席中、9.8%にあたる523打席に立っていて、そこに守備・走塁での貢献も上積みされます。この単純な比較だけでも、労働量の違いは明らかです」
ただ、先ほど谷繁氏も指摘していたように、独特のプレッシャーの中で投げる重責を考えれば、クローザーの1イニングを普通の1イニングと捉えることに抵抗を覚えるファンもいるだろう。
「セイバーメトリクスには、『Leverage Index(LI)』という、その場面の重要度を表す指標があります。栗林が登板した時点のLIを平均すると1.5で、これは標準的な場面よりも勝利に与える影響度が1.5倍高かったことを意味します」
「今回算出したWARにはLIを組み込んでいませんが、仮にLIで補正した場合、栗林のWARは2.7になります。栗林が重要な場面で投げ続けたことを考慮しても、牧とはやはり歴然の差があるのです。裏を返せば、セカンドという負担の大きいポジションでリーグトップクラスの打撃成績を残し、フルシーズンを戦い抜いた牧の貢献度は、それだけ突出しているのです」
下馬評では栗林が優勢とみられているようだが、データ上では牧に軍配。実際の投票結果はどうなるだろうか。
構成●SLUGGER編集部
「たかが1イニングと思われるかもしれませんが、抑えはかなりのプレッシャーというかかってくるポジションです。先発投手の勝ちや、野手の勝利打点も、下手をすれば1回で全部壊れてしまう。それを新人が1年間やり通したというのは、これはもう評価せざるを得ないですよ」
では、セイバーメトリクスの観点からはどうなのか。データスタジアムでアナリストを務める佐藤優太氏は次のように指摘する。
「単純に勝利貢献度WARで比較するなら、新人王は牧でしょう。栗林のWARが2.2なのに対し、牧は5.7と倍以上の差をつけています」
これは多くのファンにとって予想外だろう。では、なぜこれほどの差になるのか。佐藤氏によれば、ここで大事なのは「質と量」だという。
「栗林の『質的貢献』は申し分ありませんが、『量的貢献』にあたる投球イニングは52.1回にとどまります。チーム全体の投球イニングが1253.2回ですから、栗林が占める割合は4.2%に過ぎません。対して、牧はチーム全体の5340打席中、9.8%にあたる523打席に立っていて、そこに守備・走塁での貢献も上積みされます。この単純な比較だけでも、労働量の違いは明らかです」
ただ、先ほど谷繁氏も指摘していたように、独特のプレッシャーの中で投げる重責を考えれば、クローザーの1イニングを普通の1イニングと捉えることに抵抗を覚えるファンもいるだろう。
「セイバーメトリクスには、『Leverage Index(LI)』という、その場面の重要度を表す指標があります。栗林が登板した時点のLIを平均すると1.5で、これは標準的な場面よりも勝利に与える影響度が1.5倍高かったことを意味します」
「今回算出したWARにはLIを組み込んでいませんが、仮にLIで補正した場合、栗林のWARは2.7になります。栗林が重要な場面で投げ続けたことを考慮しても、牧とはやはり歴然の差があるのです。裏を返せば、セカンドという負担の大きいポジションでリーグトップクラスの打撃成績を残し、フルシーズンを戦い抜いた牧の貢献度は、それだけ突出しているのです」
下馬評では栗林が優勢とみられているようだが、データ上では牧に軍配。実際の投票結果はどうなるだろうか。
構成●SLUGGER編集部