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MLB

【エンジェルスの失われた10年:後編】ワンマンオーナーに旧時代の名将…2人のカリスマが組織を停滞させた<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.01.04

 一方、モレノは典型的な「金も出すが口も出す」オーナーで、そのこともGMの仕事を一層難しくしている。12年オフのハミルトン獲得も、モレノの鶴の一声で決まったと言われている。20年2月には、ビリー・エプラーGM(当時)が成立させたドジャースとのトレードを認めず、破談に追い込んだこともあった。

 通常、GMは主力選手の契約内容やマイナーでの育成状況などを踏まえた上で、チーム作りの長期計画を策定する。だが、エンジェルスの場合、何よりも優先されるのはオーナーの意向。そこに問題の本質がある。

 今年7月、『ベースボール・プロスぺクタス(BP)』に掲載された記事では次のような厳しい指摘があった。「モレノは自分のチームが負ける姿にうんざりしている。だが、自らの凝り固まった価値観を修正したり、改めようとはしない。彼のやり方が機能していないことが証明されているにもかかわらず」。ビッグネームの選手を好む一方でドラフトや育成を軽視し、長期的視野に欠けるモレノの意向にGMが振り回された結果が現在の停滞を招いた、ということだ。

 また、地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』のジェフ・フレッチャー記者はこう書いている。「エンジェルスはファーム組織再建のためチームを解体することも、トレードで戦力強化するためマイナー組織を活用することもできなかった。そして、FA補強で一気にチームを再建させるために必要な金額を費やすこともためらった(そうしたやり方はたいてい、失敗するものだが)」。この方向性の欠如も、GMに十分な権限が与えられていないからこそだろう。
 
 20年シーズン終了直後、エプラーGMは解任された。誠実な人柄で大谷の心をつかみ、ファーム組織の再生にも尽力したが、在任5年間で勝ち越しすら一度もなかった。後任候補として、某球界関係者は「アートと対等にやり合うには経験と実績がある人物でなけれらばならない」との理由で、マーリンズとレッドソックスを世界一に導いたデーブ・ドンブロウスキの名を挙げていた。

 だが、ドンブロウスキはフィリーズの編成トップに就任。エンジェルスが選んだのはGM経験のないペリー・ミナシアンだった。つまり、今も実質的な実権を握っているのはモレノということになる。『BP』の記事には、こんなことも書かれていた。「すべてのベースボールファンは、大谷とトラウトがプレーオフで戦う姿を目撃する権利がある。何より、大谷とトラウトにはプレーオフの舞台を味わう権利があるはずだ」

 エンジェルスのこの10年は、ベースボールは一握りのスーパースターの力だけでは勝てないスポーツであることを改めて教えてくれている。エンジェルスとあらゆる点で好対照なレイズの成功からも、同じ教訓が引き出される。モレノがこのことを理解しない限り、トラウトと大谷がポストシーズンで躍動する姿はずっと見られないままかもしれない。

文●久保田市郎(SLUGGER編集部)

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