専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

「歴史の裏主人公」「マネーボールの申し子」――自ら命を絶ったジェレミー・ジアンビの短くも波乱に満ちたキャリア<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.02.13

 メジャー通算打率.263に対して出塁率は.377。たしかに、ジェレミーの選球眼は一流だった。ただ、結局は兄のような成功は収められなかった。メジャー6年間で4球団に在籍したが、どのチームでも準レギュラーにとどまった。

 守備と走塁が大の苦手(ジェレミーが外野で打球を追う姿を『マネーボール』は「狂犬から逃げまどう郵便配達人のよう」と形容した)だった点もあるが、なによりも素行面の問題がチームを渡り歩く原因となった。

 兄と同じようにステロイドも使っていただけでなく、マリファナ不法所持で逮捕されるなど、トラブルも絶えなかった。映画版『マネーボール』では、チームの敗戦後にもかかわらず、クラブハウスで大音量の音楽を流して呑気に踊るジェレミーに、ビリー・ビーンが激怒する場面がある。
 
 引退後はプライベートレッスンで子どもたちに打撃を指導していたというジェレミー。2年前に掲載された米メディア『The Athletic』の記事によると、子どもの保護者から“ザ・フリップ”について尋ねられた時は「それも俺の人生の一部だ。いいことであれ悪いことであれね」と言っていたという。

 一方、同じ記事内で、01年当時にアスレティックスの指揮を執っていたアート・ハウは“ザ・フリップ”について、次にように語っている。

「数年前、テレビであのプレーを見たが、私は今でも彼はセーフだったと思う。ジェレミーが気の毒だよ。本当にね。彼はこのことでひどい仕打ちを受けた。実にアンフェアだ。心からそう思う」

 豪放な人間の多くがそうであるように、ジェレミーも豪快な外面の下に繊細な一面を持っていたようだ。元チームメイトのバリー・ジーとは訃報に際し、こんなコメントを残している。

「彼は、とても繊細な心を持った、信じられないほど愛情深い人間だった。心の奥深くで何かと闘っていたことは、僕たちチームメイトには明らかだった」

構成●SLUGGER編集部

 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号