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MLB

ロブ・マンフレッドを「MLB史上最悪のオーナー」と断言できるこれだけの理由<SLUGGER>

出野哲也

2022.02.26

 マンフレッドの評判を決定的に落としたのは、20年の開幕時期を巡るゴタゴタの解決に手間取ったことだった。

 開幕直前に新型コロナウイルスがアメリカ国内で爆発的に広がったことから、開幕が延期されたのは当然の判断であった。だがその後、いつシーズンを始めるのか、試合数はどのくらいにするかを巡ってオーナー側と選手会が衝突。その際、マンフレッドが一貫してオーナーサイドに立ち続けたことで、選手会との関係を決定的に悪化させてしまった。

 この時の確執が、現在の労使交渉にも悪影響を与えているのは疑いない。本来、コミッショナーはこの種の対立が生じた場合、中立の立場で事態の解決に努めなければならないのだが、マンフレッドの頭には、実質的な“雇い主”であるオーナー連中の機嫌を損ねないようにすることしかなかった印象がある。

 ロックアウトにおいてもその姿勢に変化はなく、積極的に労使の間を取り持って交渉妥結に向け動いているようには見えない。マーカス・ストローマン(カブス)などはマンフレッドを「道化者」と嘲り、「これ以上野球を台無しにするのはやめてもらえませんかね」と強い調子で非難している。他の選手たちの意見もほとんど同じだろう。
 これまでの言動や行動からして、マンフレッドには野球というスポーツそのものに対する敬意が薄いように思えてならない。20年に、ワールドシリーズの優勝トロフィーを「金属の塊」と形容して猛反発を招き、謝罪に追い込まれた一件などはその象徴だろう。マイナーの削減にしても選手会との対立にしても、目の前にある些末な問題にとらわれて、広い視野に立って見ることができないので混迷が深まっているのだ。

 過去のコミッショナーたちも、決して評判のいい者ばかりではなかった。シーリグにしても、正式に就任する前の代行時代、1994年に発生した選手会のストライキを解決できず、同年のポストシーズンを中止に追い込んだ。

 この一件によって最悪のコミッショナーと罵倒されたシーリグだが、その後ワイルドカードの導入などの改革を成功させ、またインターネット時代に上手に対応してビジネス的な大成功をもたらした。そのため、当初とは逆に最高のコミッショナーとまで呼ばれるようになったが、在任中に禁止薬物問題を放置した責任を問う声もある。
 
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