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大学野球

打っては4番、投げては150キロ! 日体大の異能戦士・矢澤宏太は二刀流をプロでも継続できるのか? スカウトの分析は――

西尾典文

2022.04.15

 冒頭でも触れたように3年以降は投手としての安定感も増し、昨年は春秋ともに3勝をマークして防御率もトップ5に入るなど成長ぶりを見せている。そして迎えたこの春のリーグ戦、第1週の桜美林大戦では最速150キロをマークするなど5回を投げて1安打無失点で勝ち投手となる。打ってもライトへのホームランを含む3打数3安打を記録すると、指名打者として出場した翌日の試合では4打数4安打もマークした。

 筆者が今春に見たのは、桜美林戦の翌週に迎えた東海大戦。この試合では人差し指と中指にできたマメの影響で制球に苦しんだものの、7回2失点とゲームをまとめ上げてチームの勝利に貢献。最終学年となって投打両面でレベルアップした姿を見せつけた。

 では、矢澤のプレーぶりについてプロのスカウト陣はどのように見ているのだろうか。数人のスカウトに話を聞いたところ、プロでも二刀流ができると即答したのは1人だけで、どちらかと言えば野手と答えた方が多かった。

 その理由としては、野手の方がより“スーパー”な存在になれる可能性が高いのではということである。現在は負担を減らすために野手として出場する時はDHが多いが、外野手として見せる返球はプロでもなかなかお目にかかれないだけの質や球威があるのは間違いない。

 また、昨年の大学日本代表候補合宿でも蛭間拓哉(早稲田大)や山田健太(立教大)といった野手の上位指名候補たちと比べても遜色ない長打力を見せており、先述したようにスピードも飛び抜けたものがある。これだけ高いレベルで三拍子揃った外野手はなかなかいないというのは確かだ。

 しかし投手としても高校時代の制球難は確実に解消されており、今年の大学生ではトップクラスの実力がある。野手を推すスカウトにも、「リリーフならかなり面白い」と話した者もいた。

 二刀流というとどうしても大谷翔平(エンゼルス)のように先発を思い浮かべるかもしれないが、基本的に野手として出場しながら投手としても準備し、リリーフとしてマウンドに上がる新たな形もあるのではないだろうか。左のリリーフはプロでも需要は高く、そういった起用を考える球団が出てくることも十分に考えられるだろう。

 どんな意図で矢澤を指名するかは球団によって判断が分かれそうだが、そこまで迷わせるだけの能力を見せているのは間違いなく、そういう意味では近年のドラフト候補でも唯一無二の存在だと言える。今後の試合でも、プロ側を大いに悩ませるくらいの投打両面での活躍を見せてくれることを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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