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大学野球

京大医学部の“異色の候補”。無名だった右腕・水口創太が描くプロへの道「ドラフトへの最短距離だと思って受験した」

大友良行

2022.04.30

 ドラフト候補としては、初登板が昨春とかなり遅咲きの感はある。だが、水口は膳所高校時代からこれといった実績もなかったため、それは仕方がない面はある。ゆえに彼は大学入学時から努力を重ねてきた。

 幼少期から身長こそあったものの、横幅がなかった水口は、食事とウェイトトレーニングで全身の筋肉量を増やす日々を重ねた。すると、大学入学時に84キロだった体重も今では98キロまで増加。授業で学んだ、タンパク質が多く、脂質も少ない鶏肉中心の食事療法も実を結んだ。

「ここの医学部は、スポーツ、特に野球をする上での研究、身体についての勉強などができますし、トレーナーも育成しているところでもあります。自分が目標にしているプロのドラフト会議で名前が読み上げられることに最短距離にある学部だと判断して受験しました。こういった環境でやってきたことを結果にするためにも、この1年が勝負になります」

 そう決意を新たにする水口だが、避けられない問題もある。医学部の授業が4年生になると、よりタイトになってくるのだ。とくに彼の所属する人間健康科学科では1月からの6週間、4月からの8週間は、土日を除いて実際に病院へと出向いて朝9時から夕方5時までの実習がある。そのため全体練習に参加できないのである。

 自らコンディションを整え、試合に向けてはモチベーションも上げていくしか方法がなくなる。実習を終えた後に、たった一人で30球ほどの壁当てとランニングをし、リーグ戦はぶっつけ本番で臨むしかない状況だ。当然、調整不足は免れない。

 しかし、「それをクリアしなくてはプロには行けない」と自覚する本人は、実習が終わる5月以降は野球に打ち込めると前向きだ。こうしたポジティブ思考も彼の良さなのかもしれない。

 ちなみに現時点でのスカウトの評価は上々だ。オリックスの内匠(たくみ)政博スカウトは、「本人も感じているでしょうが、コロナと実習で調整不足のようですね。実習が良いとか悪いとかではなくて、それは学生の基本ですから」としつつも、ここ半年で急激に伸びてきたポテンシャルに大きな期待を寄せている。

「今が絶対評価だとは思いたくないし、そういうことを踏まえながら彼のパフォーマンスを見て評価させてもらうつもりです。タイプ的には力で抑える先発、抑えの両方だと思います。いずれにしても、決して技巧派ではない本格派でしょう。加えて変化球もある。実習が明け、夏に向かってどこまで上がってくるか。打者をねじ伏せるかたちが見たいですね」

 多士済々のドラフト戦線においても、異彩を放つ水口。学業との両立をしながらプロ行きを目指す若武者の未来に注目だ。

取材・文●大友良行

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