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MLB

大谷翔平らも悩ませる“誤審”。アメリカで進むロボ審判導入は必然か? 「審判の権威低下」の意見は本末転倒だ<SLUGGER>

豊浦彰太郞

2022.05.08

判定に不服な態度を取り、白井球審から詰め寄られた佐々木。こうした騒動を起こさないためにも、AI技術を導入すべきなのか。写真:塚本凜平(THE DIGEST)

判定に不服な態度を取り、白井球審から詰め寄られた佐々木。こうした騒動を起こさないためにも、AI技術を導入すべきなのか。写真:塚本凜平(THE DIGEST)

 野球の長い歴史では、判定に関する多くの事件やドラマが生まれた。詳述こそしないが、NPBでの「円城寺、あれがボールか秋の空」やMLBでのアーマンド・ガララーガの幻の完全試合などは、人のプレーを人が判断するために生まれた“ドラマ”だった。

 現在のMLBで毎試合繰り返されるビデオリプレーは、最終的な判定の精度を上げた。それは事実だが、一方でより魅力的になったとは言い切れない。個人的には、怒り心頭の相手を迎え撃つ審判の丁々発止や、タイミングをわきまえた監督の引き際を見ている方が興味深かった。

 投球判定も含めてあらゆるプレーが高性能カメラでしっかり確認できる時代ではある。審判の肉眼でのジャッジにこだわり続けるのは無理があるように思える。「審判による判定が最終にして絶対」や、「誤審もゲームの一部」という意見は、他に選択肢がない状況下でこそ意味を持っていた。

 デジタル技術が確信的な進化を遂げている。そんな時代にあって、審判が最終判断を下すための補助として、ロボットやAIを併用するのは必然ではないか。ロボ審判を論ずる際に「審判の権威低下」が問題視されるが、彼らの権威を判定の精度より上位に置くのは本末転倒だろう。

 そもそも、電子デバイスを伴う判定を排除するという選択肢も存在する。しかし、その場合、野球は日本の大相撲のように「変わらないことに意義がある」競技になってしまうのではないか。それでも、他にも観戦スポーツの選択肢が多いなか、今後長く国民的娯楽であり続けるだろうか。

 世の中はどんどんデジタル化している。そのなかで頑なに古くからの様式にこだわるとファン層は限定され、ビジネスとしても縮少しかねない。同時にそれは選手サラリーの伸び悩み、ひいては競技者人口の減少にもつながるかもしれない。

 アラカン(還暦間際)の私は、「プレーするのも、それを裁くのも人」という様式にロマンを感じている。同タイプのファンは決して少なくないだろう。しかし、選手もファンも毎年確実に世代交代が進んでいる。物心ついた頃からビデオリプレーが当たり前だった世代の構成比がどんどん大きくなってゆく。

 電子判定への移行是非は、自動車やバイクの電動化議論に似ている。フェラーリやハーレーが電動化され独特のサウンドを発しなくなることを、今のマニアの多くは受け入れないだろう。しかし、そんな世代は確実に減っている。免許を取った時にはフェラーリもハーレーも電動化されていた、という世代が購買層の中心になる時代がきっと来る。同じことが、野球の電子判定化にも言えるだろう。

 私にとって救いなのは、年齢的にそんな時代に出くわさなくて済みそうだ、ということだ。

文●豊浦彰太郎

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