“変革の春”を過ごし逆襲への機運は一気に高まっていた。2月の沖縄・宜野座キャンプ、2022年初実戦となった紅白戦の先発マウンドでインパクトを与えたのは直球ではなく“新球”。初回にメル・ロハスJr.を空振り三振に切った内角へ切れ込む109キロのカーブだった。
「打者の頭にない球。ちょっと遊んでやろうという気持ちが良い方向に出た」と意図を明かした梅野隆太郎のサインではあったものの、昨年1軍では2球しか投げていない球種だ。本人も「相手の頭にチラつくと思う。カーブがあるっていうだけでも違ってくる」と直球、カットボール、スプリットに頼るこれまでのスタイルからの脱却を図る意思を込めていた。
最速162キロを誇る直球、鎌を振り下ろすような軌道を描くカットボールを持ちながらもここ数年、藤浪が意識しているのは「緩急」だ。カーブの他にも、カットより遅く、曲がり幅の大きいスライダーの精度向上を課題に挙げてブルペンでも投げ込んできた。
加えて、今春のキャンプ中には長年、試行錯誤を繰り返してきたフォームに関しても「立ち返れる場所がある」と確かな手応えを得ていた。「緩急」とともに繰り返してきたのが、「脱力」や「力まない」というワード。力んで上半身が前に突っ込めば、腕の振りが窮屈になって操作性が失われる。制球が乱れるメカニズムを理解しているからこその「立ち返れる場所」だった。
キャンプ後のオープン戦では崩れる試合もあったが、翌週の試合では修正する姿も披露。期待感を抱かせての開幕だったが、ここまで1軍での3登板では、計11四死球を記録するなど、結果は芳しくない。
チームは開幕9連敗を喫するなど大きく出遅れ、今もリーグ最下位に低迷。巻き返しへ背番号19の力も必要になってくるが、本人は4月の段階で「(チーム状況は悪いが)自分のできることを自分がするしかないと思うので。勝つチャンスをできるだけ作れたら」と気負うことはなかった。
立場として今は、1軍のローテーションを奪い取り、守っていかなければいけない。チームのことよりも、いまだ未勝利の10年目の“第一歩”を記すことが先になる。層の厚い1軍の先発陣を見れば、昨年もあったリリーフ起用の可能性もゼロではない。それでも、藤浪は「自分の中ではそれはないですね。あくまで先発でいきたいというのがあるので」と言葉に力を込めた。
今オフに「自分のエゴで」と口にした先発1本で勝負する決意は変わらない。シーズンは3分の1を消化し、交流戦も始まった。決して容易くない競争の中で昇格のチャンスをつかむことができるか。先発として帰ってくる――。今こそ、藤浪晋太郎の地力と真価が問われる。
取材・文●チャリコ遠藤
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「打者の頭にない球。ちょっと遊んでやろうという気持ちが良い方向に出た」と意図を明かした梅野隆太郎のサインではあったものの、昨年1軍では2球しか投げていない球種だ。本人も「相手の頭にチラつくと思う。カーブがあるっていうだけでも違ってくる」と直球、カットボール、スプリットに頼るこれまでのスタイルからの脱却を図る意思を込めていた。
最速162キロを誇る直球、鎌を振り下ろすような軌道を描くカットボールを持ちながらもここ数年、藤浪が意識しているのは「緩急」だ。カーブの他にも、カットより遅く、曲がり幅の大きいスライダーの精度向上を課題に挙げてブルペンでも投げ込んできた。
加えて、今春のキャンプ中には長年、試行錯誤を繰り返してきたフォームに関しても「立ち返れる場所がある」と確かな手応えを得ていた。「緩急」とともに繰り返してきたのが、「脱力」や「力まない」というワード。力んで上半身が前に突っ込めば、腕の振りが窮屈になって操作性が失われる。制球が乱れるメカニズムを理解しているからこその「立ち返れる場所」だった。
キャンプ後のオープン戦では崩れる試合もあったが、翌週の試合では修正する姿も披露。期待感を抱かせての開幕だったが、ここまで1軍での3登板では、計11四死球を記録するなど、結果は芳しくない。
チームは開幕9連敗を喫するなど大きく出遅れ、今もリーグ最下位に低迷。巻き返しへ背番号19の力も必要になってくるが、本人は4月の段階で「(チーム状況は悪いが)自分のできることを自分がするしかないと思うので。勝つチャンスをできるだけ作れたら」と気負うことはなかった。
立場として今は、1軍のローテーションを奪い取り、守っていかなければいけない。チームのことよりも、いまだ未勝利の10年目の“第一歩”を記すことが先になる。層の厚い1軍の先発陣を見れば、昨年もあったリリーフ起用の可能性もゼロではない。それでも、藤浪は「自分の中ではそれはないですね。あくまで先発でいきたいというのがあるので」と言葉に力を込めた。
今オフに「自分のエゴで」と口にした先発1本で勝負する決意は変わらない。シーズンは3分の1を消化し、交流戦も始まった。決して容易くない競争の中で昇格のチャンスをつかむことができるか。先発として帰ってくる――。今こそ、藤浪晋太郎の地力と真価が問われる。
取材・文●チャリコ遠藤
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