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高校野球

エースの“ベストピッチ”でも「打倒・大阪桐蔭」はならず。旭川大高の健闘ぶりに感じた試合をコントロールする難しさ<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.10

初回に均衡を破り、幸先の良いスタートを切った旭川大高。しかし、掴んだ流れを彼らは最後までモノにはできなかった。写真:滝川敏之

初回に均衡を破り、幸先の良いスタートを切った旭川大高。しかし、掴んだ流れを彼らは最後までモノにはできなかった。写真:滝川敏之

 ただ、だからこそ難しかったのは、エースが好調であるがゆえの投手交代のタイミングだ。

 池田には完投能力があるものの、やはり大阪桐蔭打線は強力。一人で投げ切るのは難しいうえに、そもそもチームには池田に匹敵する投手がもう1人いる。このスイッチのタイミングをどうするかだ。

 端場監督は池田に7回までを任せた理由をこう説明する。

「僕の中では、本当は池田には5回ぐらい、その後を山保で行こうと。(北北海道大会では)そういう使い方が多かったので、試合前のプランとしてはそう思っていましたけど、池田がすごく頑張って投げてくれた。ただ、ホームランを打たれたのは僕の中では計算外というか。大事なピンチで逆転される前に、山保で行ければよかったかなと思っていたんですけど……」

 大阪桐蔭の打線に畳み掛けられそうになったら交代させよう。端場監督にはそういう算段があったが、そんな場面がこなかった。ただ、6、7回に1本ずつ浴びたホームランが致命傷になった。
 
 池田は言う。

「スライダーでは勝負できていたと思うんですけど、インコースに投げた真っすぐをホームランにされたのは少しびっくりしました。コースにしっかり投げれば打たれないと思っていたんですけど、それを打たれたのはやはり(大阪桐蔭打線は)凄いなと思いました」

 池田が悪かったわけではない。だからこそ端場監督は、いつものような継投は選択しなかったが、結局大阪桐蔭を抑え切ることはできなかった。7回途中から山保がマウンドに上がったが、勢いに乗る大阪桐蔭打線を止めることはできず、2点を失って3対6にまで差が広がった。

 8回表、旭川大は4番の鶴羽礼、山保の連打で無死二、三塁の好機をつかんだが、続く池田が放った一塁への痛烈なライナーで、山保が飛び出し併殺打。9回にもチャンスはあったが、攻め切ることができずに敗れた。

 あわやジャイアントキリングが起きてもおかしくなかった。

 だが、改めて継投策も含めて、試合をコントロールし続ける難しさを感じた試合だった。そして何より、すべてを跳ね返せる王者・大阪桐蔭に強さを感じたのもまた事実である。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 
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