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MLB

GMから公式記録員へ転身した“生粋の野球人”——元マリナーズGMのベースボール愛

宇根夏樹

2019.11.22

『ジ・アスレティック』の記事によると、ズレンシックが公式記録員となった経緯はこうだ。18年の開幕戦当日に公式記録員の一人が亡くなり、MLBの担当者は当時ピッツバーグのラジオ局で解説者を務めていたズレンシックに連絡した。誰か適任者を紹介してもらうつもりでいたという。ところが、ズレンシック本人がこの仕事に意欲を示した。まさに、昔気質の野球人といったところだろうか。解説者だったことから分かる通り、決して生活の糧を得るのに苦心していたわけではない。

 ちなみにマリナーズGM時代、本拠地セーフコ・フィールド(現T-モバイル・パーク)でのホームゲームでは、ズレンシックがゲームを見守る中、妻のデビーが毎試合スコアを付けていたという。ベースボールは、どうやら夫婦共通の趣味のようだ。
 
 ズレンシックはこんな風に言っている。「(スコアラーを)どうしてもやらなければいけないのか? 違う。スコアラーをやりたいのか? その通り。だって、他に何をするっていうんだい?」。近年は、ウォール街やIT企業の重役も勤まりそうな一流大出身のGMが増えているが、ズレンシックのようにずっと現場にこだわり続ける“生粋の野球人”にはやはり独特の魅力がある。

 意外な転身をした元GMは、ズレンシックの他にもいる。13年にマーリンズのGMに就任したダン・ジェニングスは、15年のシーズン序盤に監督を解任すると、自ら後釜に座り、その年が終わるまで采配を振った。ルーベン・アマロJr.は、09~15年にフィリーズでGMを務めた後、レッドソックスとメッツで一塁コーチとして働いた。今年9月には、ドジャース前GMのネッド・コレッティがサンノゼ・シャークスのスカウトに就任した。シャークスはMLBではなく、NHLの球団だ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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