そして持ち味であるバッティング以上に気になったのが走塁面だ。内野ゴロエラーの時の一塁駆け抜けやツーベース、スリーベースの時のランニングは早々に足を緩めるシーンが多く、全力疾走する姿はほとんど見られなかった。

　兄の宗隆は今年も２桁盗塁をマークしているように走塁に対しても意欲的で、プロで４番に定着してからもその姿勢は変わっていない。慶太も脚力が決してないわけではなく、これは意識によるところが大きいはず。兄のようなハイレベルな打撃技術をいきなり真似るのは難しくても、全力で走るのはすぐにできるはず。そこはすぐにでも改善してもらいたいところだ。
  　ここまでは厳しい評価が続いたが、もちろん選手としての魅力は間違いなくある。今大会でも三振は１つだけと、空振りをするケースは少なく、大型の割にバットコントロールは決して悪くない。

　また、春の熊本大会でプレーを見た際には、高々と打ちあがる犠牲フライを放っており、ヘッドスピードも目立つものがあった。あとはとにかくタイミングの取り方を改善すればそのパワーは生きてくるはずだ。そのためには本人の努力ももちろんだが、今後良い指導者に巡り合えるかという点も重要になってくるだろう。

　大会前にスカウトや関係者から聞いた話では、基本的には大学進学を希望しており、もしも、上位指名の評価を得られればプロ入りも検討するという話だが、現時点で上位候補となるのは考えづらい。ただ持っている素質の良さを感じているスカウトも多いはずで、大学進学となってもスカウティングは続いていくだろう。現在の課題をしっかりと克服して、再びその名前がドラフト戦線に浮上してくると期待したい。

文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所（PABBlab）」でも多くの選手やデータを発信している。

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