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高校野球

球史に残る好投手たちも挑んだ“白河の関越え”。ついに全国制覇を果たした東北勢の「甲子園決勝惜敗」の歴史<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.08.22

 それから20年後の89年夏には闘志あふれる投球が持ち味の仙台育英のエース、大越基が“白河の関越え”に挑んだ。準々決勝では当時全国随一のスラッガーだった元木大介(現巨人コーチ)を要する上宮を破り、準決勝の尽誠学園戦でも延長10回を完投。この試合では自ら決勝打を放つなど、3番打者としての活躍も光った。

 準決勝の途中から右ヒジ痛を発症していたが、それでも帝京との決勝に先発すると、9回までは無失点の力投。だが、仙台育英打線も相手投手の吉岡雄二(のち近鉄)に抑えられ、大越は延長10回に2失点と力尽き、またも悲願達成はならなかった。

 2000年代に入ると、2人の未来のメジャーリーガーが全国制覇へ挑んだ。

 03年夏に東北高を牽引したのは、当時2年生だったダルビッシュ有(現パドレス)だ。1年の秋からエースを張っていた怪童は、1回戦で腰を痛めながらも好投。最速147キロの速球と豊富な球種を武器に、準々決勝までの計25.1イニングをわずか3失点に抑え、決勝進出に貢献した(準決勝は登板せず)。

 だが、決勝では名将・木内幸男監督に率いられた常総学院の強打に押されて4失点で、全国制覇はならず。この後、ダルビッシュは3年の春・夏にも甲子園に出場したが、いずれも決勝には進めず敗退している。
 
 6年後の09年春のセンバツでは、今度は菊池雄星(現ブルージェイズ)が最速152キロの速球を引っ提げて甲子園に殴り込んだ。2試合連続完封を含め、準決勝まで計31イニングで2失点と圧巻の投球で、花巻東を岩手県勢初の決勝に導いた。

 だが、最後に菊池の前に立ちはだかったのが、清峰高のエース、今村猛(元広島)だった。白熱の投手戦となった決勝で、菊池は1点に泣いて惜敗。「今日は本当に勝ちたかった」とベンチで男泣きする姿も話題となった。

 そして18年夏、記念すべき第100回大会では、公立高の金足農が甲子園に旋風を巻き起こした。エースの吉田輝星(現日本ハム)は、県大会全試合を一人で投げ抜き、甲子園では1回戦から準々決勝まで4試合連続2ケタ奪三振の大会タイ記録を達成した。

 だが、“公立の星”金足農と決勝で対戦したのは、根尾昴(現中日)、藤原恭大(現ロッテ)ら巨大戦力を擁する“平成最強”大阪桐蔭。強力打線の前に吉田は5回12安打12失点と滅多打ちを食らって降板し、記念大会での“白河関越え”の夢は露と消えた。

 これまで決勝に進んだ東北勢の多くは絶対エースを擁していたが、今大会の仙台育英はベンチ入りした5人のピッチャー全員が最速145キロ超えと、高校野球史上でも異例の層の厚さでついに悲願の全国制覇を果たした。幾人もの“つわもの”たちが敗れた夢の跡の上に、仙台育英はついに深紅の大優勝旗をつかみ取ったのだ。

構成●SLUGGER編集部

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