専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

ファン目線の改革を断行も大谷とトラウトの才能を浪費…エンジェルス身売りを表明したオーナーの“功罪”<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.24

 15年以降のチームの低迷は、モレノの「独断専行」に因る部分も大きい。大物FA野手を好んで獲得する一方で、チーム全体のバランスやマイナー組織の向上には関心を寄せず、GMが成立させたトレードに介入して破談に追い込んだこともあった。

 近年は監督もGMも短期間で入れ代わり、チームのビジョンが見えないままいたずらにトラウトと大谷の才能を浪費するシーズンが続いた。ついには、「大谷やトラウトのスターパワーがもたらす観客動員や広告料収入を勝つことよりも優先しているのではないか」との声が出るほどになった。

 そして結局、モレノは一度もワールドシリーズ優勝を達成できないままチームを売却する運びになった。

 だが、ビジネスとしては大成功だった。経済誌『Forbes』によると、エンジェルスの現在の資産価値はMLB9位の22億ドル。モレノが買収した当時と比べて、実に10倍以上に跳ね上がっている。今回の身売りでモレノ自身は莫大な利益を得るが、30歳を過ぎて背中に爆弾を抱えるトラウトの超大型契約、来年オフにFAとなる大谷、そしてMLBワーストクラスのファーム組織を置き土産にしてアナハイムを去る。
 
 今回の身売り報道を受け、地元紙『Orange County Register』のジム・アレクザンダーは「(退任を祝う)パレードの申し込みがアナハイム市に殺到する様子が思い浮かぶ」と強烈にこき下ろした。

「球団史上最高のオーナー」になるはずだった男は、「大谷とトラウトの偉大な才能を浪費し、チームの暗黒時代を招いたオーナー」として歴史に記憶されることになるのだろうか。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号