ポストシーズンは短期決戦。特に初戦を取られた後は「負ければ終わりですから」と、三浦監督はベンチ総動員で臨むと示唆していた。しかし。積極的に動いた阪神の矢野燿大監督と比べると、三浦監督は“静”の采配に見えた。それは、シーズンを戦い抜いた選手への信頼感の表れだと感じた。

　２戦目は大貫晋一を７回のマウンドへ、３戦目もどうにか踏ん張っていた濱口遥大を６回に続投させた。ともにピンチを迎えてしまったが、采配は結果論。リリーフ陣に頼るケースが目立った今季、大一番で先発ピッチャーとして鳴らした監督の心意気を感じるタクトに見えた。また、東克樹を中継ぎ待機させていたが、信頼のリリーフ陣はシーズン中と同じ役回りで起用した。

　一方、攻撃面ではリードオフマンとしてチームを引っ張っていた桑原将志が不調に陥り、３戦目はスタメンから外した。しかし、途中に代打起用から定位置のセンターに就かせ、初戦でミスを犯して頭を丸めたホープ・森敬斗を最後に代走に送るなど、短期決戦ながらも選手の心に寄り添う用兵を見せた。

  　終戦後、「ファンの方も今までにない手拍子の大きさ、拍手の大きさ、球場全体を盛り上げてくれましたし、雰囲気を作ってくれました。その雰囲気の中で戦えたことは幸せだと思います」と指揮官。監督就任時、「一緒に戦ってください」と共闘を願ったファンは、最後まで“番長”をサポートした。

　横浜大洋ホエールズ最後の日にデビューし、2008年に「横浜が好きだからです」と残留を決めた横浜一筋・三浦大輔。そして彼の求心力によって集まったレジェンドコーチとともに、来シーズンは歴史と街を巻き込んだ、よりスケールの大きい“心を揺さぶる野球”を成就させてくれると信じている。

取材・文・写真●萩原孝弘

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