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プロ野球

ダルビッシュも認める浅村栄斗の「ホンモノの打撃」。日本を世界一に導いた“トレンド”を打ち破る究極の一打【お股ニキ流アナライズ Vol.4】

お股ニキ

2019.11.25

代表では主に5番を務め、勝負強い打撃で何度も日本を救った。写真:滝川敏之

代表では主に5番を務め、勝負強い打撃で何度も日本を救った。写真:滝川敏之

 しかし、レギュラーシーズンではやや大振りや粗さが目立っていたものの、やはりこの天才打者はクライマックスシリーズではしっかりと合わせてきた。

 ソフトバンクとのファーストステージ第1戦では、初回の第1打席、追い込まれながらも千賀のフォークを反対方向の右中間スタンドに運ぶ先制ホームラン。5回には、フォークを打たれたことでバッテリーが投げにくくなると予想してストレートを狙っていたのだろう。インコースの154キロの速球を今度はレフトスタンドへ。どのような球でも対応できるバットコントロールと、甲斐が「スウィングしないと思っても突然バットが出てくるよう」と評する鋭いスウィングが、“浅村らしさ”がこの一番で戻ってきたのだ。そして、先の『世界野球プレミア12』でも、彼らしい柔らかい打撃の逆方向への一打が何度も見られた。アメリカ戦では敗れたものの、3打席連続タイムリーを放っている。
 
 決勝の韓国戦では、なかなか追加点が奪えない1点差の苦しい展開で迎えた7回、貴重なダメ押し打を、これまた逆方向に打っている。丸佳浩(巨人)、鈴木誠也(広島)の3・4番が打ち取られて嫌なムードが漂っていた中で生まれたこのタイムリーには、最後の2回を投げた山本由伸(オリックス)や山﨑康晃(DeNA)だけでなく、チーム全体も楽になったはずだ。

 ポストシーズンでは、浅村本来の思い切りのいい一発長打と、反対方向への勝負強い打撃。代表チームにおける「理想的な5番打者」が帰ってきた印象を受けた。打率.260、35本塁打の選手よりも、打率.300、 30本、100打点の選手が怖い。

 昨今、三振は必要コストであり、長打やホームランがすべてで打率を軽視しすぎるような風潮が進み、私はこれに疑問を投げかけている。私が求める「ホンモノの打撃」には、やはり状況に応じた長打や軽打、引っ張りと逆方向、フライやライナーの適切なバランスと使い分けが何よりも重要だなと、浅村の打撃の推移と変貌で改めて感じさせられている。

【プロフィール】
おまたにき/野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、さまざまなデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配ついての考えをツイッターで発信すると、2019年8月現在、2万5000人以上にフォローされる人気アカウントとなる。プロ野球選手にアドバイスすることもあり、中でもツイッターで知り合ったダルビッシュ有(カブス)に伝授した“お股ツーシーム”は多くのニュース媒体でも取り上げられた。今年3月に発売した初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴 マネー・ボールを超える野球論』(光文社)が大反響を呼んでいる。大のサッカー好きでレアル・マドリーファン。
 

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