当然、その巨大な熱量はスポーツチームにも注がれる。ファン、メディアも手厳しいことで知られる。フィリーのファンは「サンタクロースにすらブーイングを浴びせる」と言われるほどで、結果を出せない自軍選手にも容赦はない。今季開幕直後、三塁手のアレック・ボームが3つの送球エラーを犯し、ファンから大ブーイングを浴びせられて思わず「この場所が大嫌いだ」とこぼした姿がカメラに捉えられる事件があった。
移籍1年目でなかなか結果が出ず、こちらもファンの標的になったニック・カステヤノスが「ファンのブーイングは聴こえたか」と尋ねた記者に「バカな質問だ」と答えて口論になり、その映像が拡散してしまう一件もあった。東海岸のチームではよくあることだが、その中でもフィラデルフィアでのプレーには特に精神的なタフネスが要求されるのは間違いあるまい。
もっとも、その一方で、かつてのチェイス・アトリー、現在のハーパーのように、ハードワークを信条とし、大舞台でも結果が出せる選手は狂信的なまでに愛される。そして、チームがビッグステージまで勝ち進んだ時、球場にはほとんどマグマのように熱い熱気が生まれるのだ。
今季のフィリーズは全12チーム中最低の成績でポストシーズンに滑り込みながら、下克上の連続で13年ぶりのワールドシリーズへ駒を進めた。フィラデルフィアが舞台の名作映画『ロッキー』を彷彿とさせるストーリーに、地元ファンが燃えないはずがない。そんな経緯を考えれば、シチズンズバンク・パークがこれまで以上のエナジーに包まれたのも当然かもしれない。 だが、そんなフィリーズを相手に、常勝軍団アストロズはさすがの強さを見せつけた。第4戦では、先発クリスチャン・ハビアをはじめ4投手の継投でワールドシリーズ史上2度目のノーヒッターを達成し、フィリーズの「地元不敗神話」もストップさせた。
しかし、こんな屈辱的な負け方の後でも、いや、その後だからこそ、3日の第5戦で反骨心に満ちたフィラデルフィアンの闘志が余計に燃え上がりそうだ。
泣いても笑ってもフィラデルフィアでの今季ラストゲーム、アストロズの先発はエースのジャスティン・バーランダー。相手に不足はない。シリーズの行方をも左右するであろう重要なゲームで、エッジの効いたフィリーズファンの狂気の入り混じった大歓声、、そして大ブーイングをもう一度体感するのが今から楽しみだ。
文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
移籍1年目でなかなか結果が出ず、こちらもファンの標的になったニック・カステヤノスが「ファンのブーイングは聴こえたか」と尋ねた記者に「バカな質問だ」と答えて口論になり、その映像が拡散してしまう一件もあった。東海岸のチームではよくあることだが、その中でもフィラデルフィアでのプレーには特に精神的なタフネスが要求されるのは間違いあるまい。
もっとも、その一方で、かつてのチェイス・アトリー、現在のハーパーのように、ハードワークを信条とし、大舞台でも結果が出せる選手は狂信的なまでに愛される。そして、チームがビッグステージまで勝ち進んだ時、球場にはほとんどマグマのように熱い熱気が生まれるのだ。
今季のフィリーズは全12チーム中最低の成績でポストシーズンに滑り込みながら、下克上の連続で13年ぶりのワールドシリーズへ駒を進めた。フィラデルフィアが舞台の名作映画『ロッキー』を彷彿とさせるストーリーに、地元ファンが燃えないはずがない。そんな経緯を考えれば、シチズンズバンク・パークがこれまで以上のエナジーに包まれたのも当然かもしれない。 だが、そんなフィリーズを相手に、常勝軍団アストロズはさすがの強さを見せつけた。第4戦では、先発クリスチャン・ハビアをはじめ4投手の継投でワールドシリーズ史上2度目のノーヒッターを達成し、フィリーズの「地元不敗神話」もストップさせた。
しかし、こんな屈辱的な負け方の後でも、いや、その後だからこそ、3日の第5戦で反骨心に満ちたフィラデルフィアンの闘志が余計に燃え上がりそうだ。
泣いても笑ってもフィラデルフィアでの今季ラストゲーム、アストロズの先発はエースのジャスティン・バーランダー。相手に不足はない。シリーズの行方をも左右するであろう重要なゲームで、エッジの効いたフィリーズファンの狂気の入り混じった大歓声、、そして大ブーイングをもう一度体感するのが今から楽しみだ。
文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。