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プロ野球

【勝利貢献指標WARで振り返る2013~21ドラフト】1位は競合より単独入札、3位より2位の成功例が多い意外な結果に<SLUGGER>

出野哲也

2023.01.03

●ドラフト4位:通算WAR112.6
▼ベスト5
1位 山本由伸(16年オリックス) 29.0
2位 高梨裕稔(13年日本ハム) 10.3
3位 塩見泰隆(17年ヤクルト) 9.4
4位 梅野隆太郎(17年阪神) 7.9
5位 坂倉将吾(16年広島) 6.7

 4位指名選手の合計WARは3位のほぼ半分と、急速にクオリティが下がる。そのうちの4分の1強に相当する29.0を一人で叩き出しているのが山本だ。塩見と坂倉の近年の活躍も目覚ましく、また平良海馬(17年西武/6.3)と、独立リーグから復帰を果たした藤井皓哉(14年広島→現ソフトバンク/1.8)は今季から先発に回るため、好成績を残せばリリーフ時代よりも多くのWARを稼げるはずだ。

●ドラフト5位:通算WAR86.9
▼ベスト5
1位 青柳晃洋(15年阪神) 18.6
2位 西川龍馬(15年広島) 10.2
3位 井上晴哉(13年ロッテ) 7.9
4位 阿部寿樹(15年中日/現楽天) 7.7
5位 岡林勇希(19年中日) 6.9

 5位で最も成功を収めたのは、21~22年と2年連続最多勝のタイトルを獲得した青柳。西川も類まれなバットコントロールで広島の主力打者に成長した。青柳と西川、そして阿部はいずれも15年ドラフト同期生で、この年は「5位指名の当たり年」であった。また、19年ドラフトでも、岡林、柳町達(ソフトバンク/2.1)、長岡秀樹(ヤクルト/1.3)と、22年に急成長した3人が指名された。5位指名がほぼ全滅だった14年、いまだに戦力になっている者がほとんどいない18年とは対照的な結果だ。

 中日はなぜか5位指名が活躍している選手が多く、阿部や岡林以外にも祖父江大輔(13年/4.7)、藤嶋健人(16年/3.0)と、5位指名のWAR上位12名中4名がドラゴンズの選手である。
 
●ドラフト6位以下:通算WAR125.9
▼ベスト5
1位 二木康太(13年ロッテ6位) 12.9
2位 岩崎優(13年阪神6位) 11.6
3位 石川柊太(13年ソフトバンク育成1位) 10.5
4位 戸郷翔征(18年巨人6位) 10.4
5位 高梨雄平(16年楽天9位/現巨人) 6.9

 6位以下の本指名選手のうち、通算WARが最も高いのは二木だが、印象度では二木を上回る選手が何人もいる。東京五輪の優勝メンバーでもある岩崎、巨人の若きエースとなりつつある戸郷、20年に首位打者を獲得した佐野恵太(16年DeNA9位/5.9)、21年に史上最低順位指名での本塁打王になった杉本裕太郎(15年オリックス10位/5.2)、22年にセ・リーグの最多ホールドを記録した湯浅京己(18年阪神6位/2.0)ら、かなりの豪華メンバーだ。なお佐野や杉本のWARが低い印象を受けるかもしれないが、これは守備や走塁でのマイナスが大きいのが理由である。

 育成指名で通算WARが10に達したのは石川一人だけ。2番目の5.8を記録しているのも、チームメイトの周東佑京(17年育成2位)だ。22年の新人王を受賞した水上由伸(20年西武育成5位)や、オリックスで救世主的活躍をした宇田川優希(20年育成3位)のような新星も現れているが、長年にわたってコンスタントに結果を残している者は少ないのが実情だ。

 このように、2と3位が入れ替わっているのを除くと、WARの数値はほぼ順位通り。前述したように、やはりプロのスカウトによる評価は概ね正しいということだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
 

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