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プロ野球

【勝利貢献指標WARで振り返る2013~21ドラフト】「高卒は当たり外れが大きい」は間違い!大卒社会人は野手に成功例が目立つ<SLUGGER>

出野哲也

2023.01.04

 過去10年間のMVP受賞者で12年以前のドラフトで入団した選手たちを見ても、田中将大・山田哲人・大谷翔平・丸佳浩・坂本勇人の5人が高卒。大卒は菅野智之・柳田悠岐・新井貴浩の3人、社会人出身は金子千尋しかいない。

「高卒は当たり外れが大きい」というのもまた定説ではあるが、こちらは真実とは言い難い。入団から5年以上を経過した1位指名選手で、通算WAR1.0未満(引退した者を含む)の人数を数えると、高校7人、大学7人、高卒社会人5人、大卒社会人1人となる。即戦力と見込んで上位指名した大卒や社会人出身者であっても、「外れ」に終わる割合は高卒と大して変わらないのだ。

 ポジション別に見ると、高卒や大卒は明確な傾向はないが、高卒社会人は投手、大卒社会人だと野手の成功例が多い。高卒社会人選手の通算WARを見ると、上位12人のうち野手は西川だけ。これに次ぐのは岡田雅利(大阪桐蔭高→大阪ガス→13年西武6位)の0.1である。そもそも指名された野手の数が10人余りしかおらず、唯一の1位指名・佐藤直樹(報徳学園高→JR西日本→19年ソフトバンク1位)は3年間で-0.1と苦しんでいる。
 
 逆に大卒社会人は、源田を筆頭として、田中や近本ら上位20人中13人が野手。先発として活躍し続けている投手は石川くらいだった。もっとも、近年になって大貫と伊藤将司(国際武道大→JR東日本→20年阪神2位/5.2)が台頭しつつある。

 ちなみに、独立リーグ経由から入団して通算WAR3.0を超えているのは又吉一人だけ。その又吉は2位という異例の高評価で入団していて、中日スカウト陣の高評価が見事に的中した形だ。

 高校や大学卒業時にNPB入りが叶わず、独立リーグ入りした選手は、その後ドラフトされても育成枠での指名が多い。支配下登録はされたとしても、主力級にまで成長するケースがそうそうないのは、データ上からも明らかだ。22年に大活躍した湯浅は又吉に続く成功例となるか注目される。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
 

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