高津監督は「勝利と育成」を両立していくことの必要事項として「経験」を挙げている。

　長岡は20年の終盤に一軍デビューを果たし、21年も５試合に出場。わずかとはいえ、一軍の舞台を経験したことが22年の躍進につながった。１打席、１イニング、あるいは練習に参加したというだけでもいい。それがプラスになると、高津監督は考えているのだ。

　その意味で今季、特に期待度が高いのは昨年の日本シリーズ第２戦で起死回生の同点３ランを放った内山壮真だ。

　甲子園でも大活躍を見せた内山は高校時代から名の知れた存在だったが、一風変わった性格の持ち主でもある。チームの主役でありながら達観したものの見方をすることができ、メンタル的にも強い。
  　その内山を、日本シリーズという大舞台で代打として起用。もちろん、打力を買ってのことだろうが、その打席経験が内山にとって大きなものをもたらすとも考えていたに違いない。折しも今季は、中村悠平がWBCでしばらくチームを離脱する。内山にとっては大きなチャンスにもなるはずだ。

　投手では、手術明けのルーキー山下輝をシーズン終盤から先発として起用。日本シリーズの第５戦でも先発に抜擢すると、５回３失点の好投で応えた。

　３連覇を目指すこのキャンプでも、新戦力を見出す期間になるだろう。高津監督は今季、どのような選手起用を見せるのか。３連覇のカギは、新たな主力選手の創出にかかっている。

文●氏原英明（ベースボールジャーナリスト）

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき／1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』（新潮社）、『baseballアスリートたちの限界突破』（青志社）がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。https://lit.link/hideaki817