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高校野球

もう“鉄拳制裁”は認められず、指導者が評価される時代に。「変化」が起きる高校球界で監督に求められる理想の姿とは?

西尾典文

2023.02.12

 1985年から約9年間、巨人でプレーした後、長く小中学生の指導にも携わっていた佐藤監督は、「選手の成長に蓋をしない」という指導方針を取っており、練習メニューはもちろん、時には練習試合のメンバーも選手に全て任せているというのだ。

 筆者が昨年12月に取材に訪れた際にも、選手たちは監督やコーチの様子を一切気にする素振りは見せず、自分たちが考えた練習メニューを黙々と消化していた。その和気あいあいとした楽しそうな雰囲気は、これまでの高校野球の現場では見られなかったものである。

 もちろん、ただ楽しく練習させているわけではない。佐藤監督は選手の求めに応じて助言を与え、専門的なトレーナーも定期的に招いて新たなトレーニング方法を伝えている。こうした選手の向上心を邪魔しないという考え方や指導法は、実に画期的なものと言える。
 
 仙台育英や東北、さらに他の結果を残している指導者を見ていて感じるのは、役割が以前よりも“マネージメント”寄りになっているという点だ。これまで名将と呼ばれてきた者たちのように全権を監督が握るのではなく、選手の能力やチーム力を上げるために必要な専門家を招聘し、任せる部分は個人に任せるというスタンスの指導者が増えているのだ。

 この点で言えば、群馬を代表する強豪に成長し、今春のセンバツにも出場する健大高崎は象徴的だ。青柳博文監督は選手のスカウティングの一部、試合の采配、そして卒業後の進路が「自分のメインの仕事である」と話す。練習やトレーニングにはほとんど口を出さず、コーチやトレーナーに任せているという。また、室内練習場やトレーニング施設なども充実しているが、そういったハード面の強化を学校から引き出せる点も、チーム強化に繋がっているのは間違いないだろう。

 2019年夏に履正社を初優勝に導いた岡田龍生監督も、昨年から母校でもあった東洋大姫路に異動しているが、就任と同時にトレーニング施設や食事面の改善を行ったという。企業におけるマネージメントの仕事は“ヒト・モノ・カネ”を動かして成果を上げること言われるが、高校野球の指導者にもそういった面が求められる時代になっていると言えそうだ。
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