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MLB

バウアーが語ったメジャーの“最前線”。日本の数年先を行く現実に募る危機感

氏原英明

2019.12.03

バウアーは自身の投球マップを見ただけですぐに理解。このあたりの知性の高さも勉強になった。撮影:氏原英明

バウアーは自身の投球マップを見ただけですぐに理解。このあたりの知性の高さも勉強になった。撮影:氏原英明

 バウアーはテクノロジーを駆使して成長を遂げた選手として知られている。このオフにソフトバンクがスタッフを“輸入”して話題を呼んだ『ドライブライン・ベースボール』(※1)にも2013年から参加し、肉体を強化しながらスピードと変化球の精度を向上させてきた。

※1……シアトル郊外にあるトレーニング施設で、最先端機器や加重ボールなどを用いた独自のメソッドで多くの選手を進化させている。この施設で働いていたスタッフが現在、多くのMLB球団にヘッドハンティングされている。

 17年には、当時インディアンスでチームメイトだったコリー・クルーバーのスラーブ、カルロス・カラスコのチェンジアップを身に付けるために、測定器で正確な握りや回転軸を探求。また、マーカス・ストローマン(メッツ/当時ブルージェイズ)のスライダーの習得を目指し、球団に直談判して本拠地球場に自らの計測器を設置し、ストローマンの武器を研究した。

 今シーズン、菊池雄星(マリナーズ)と変化球について語り合う場面がSNSでも話題にもなったが、日本の野球選手の中でもトレーニング法やデータに“詳しい方”とされる菊池ですら、バウアーの探究心には「学ぶことが多かった」と舌を巻くほどだった。

 この日、バウアーは自らのボールの変化量を示された投球マップを見ながら、現在の取り組みについてこう語った。

「カッターをもう少しストレート方向の変化に寄せたいのと、チェンジアップを沈ませたい。なので、このオフはボールの軌道と動きを変えている。ストレートについては、4シームのシュート成分が大きいので、もっと小さくしてホップ成分を上げたい。そこに回転数を上げられれば、おそらく、相手のバッターはホップして見えるようになるんじゃないかと思っている」

 日本のメディアでは回転数重視で報じられることが多いが、回転軸と回転量についても、バウアーはこう持論を展開した。

「回転軸が第一にあって、回転量は次に考えること。回転軸をキレイなバックスピンにしたいんだけど、自分の(腕の)アングルだと、スリークォーターなのでちょっと難しい。昔は、身体を一塁側に倒して投げていたから、その分、腕の角度は上向きになってきれいな回転軸で投げやすかったけど、今は、まっすぐにして投げている分、腕のアングルが変わって難しくなった。その分、スライダーが投げやすくなったんだけど。12年まではストレートとスライダー、カーブは縦系の変化のものが多かったけど、今は、左右も使えるようになってきている」
 
「アメリカの投手はアバウトだ」という野球関係者もいるが、この話を聞けば、海の向こうで展開されている野球が、いかに先進的かが理解できるだろう。今回は投手であるバウアーの話だが、バッターも同じようにデータと突き合わせながらバッティングの改善に取り組んでいる。

 最後に、今後のトレンドについても話が及んだ。

「高めの真っすぐ、キレイな回転のストレートで空振りを取るというのが今年は言われていたけど、平均的なバッターでさえアジャストしてくるようになった。ずっとこういうことの繰り返しになると思う。昔はシンカーやスライダーだったが、アジャストしてきた。スプリッターや落ちる系が今度は人気というか、効果的になると思う。そういうことがずっと繰り返されていく」

 バウアーと交流した菊池が「こういう選手を生み出すのがメジャーリーグのすごさ」と語っていたことがあった。その真意とは「すごい球を投げる」という表面的な部分ではなく、自身のピッチングを“デザイン”するためのストイックな取り組みをすることを指している。

 投げ込み、走り込みが投手を育成する主流という考えのままでは、これからもどんどんアメリカとの差は離れていくだろう。

 特別ゲストとの時間はほんの10分程度しかなかったが、現実を突きつけられた濃密な時間だった。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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