専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

「日本の練習には“創造性”を感じる」DeNAのキャンプを訪れたMLBコーチの声から改めて見えた日本野球の特色<SLUGGER>

岩国誠

2023.02.27

打撃投手を買って出たラミレス投手コーチ。彼もまた、DeNAキャンプの創意工夫に感心していた。写真:岩国誠

打撃投手を買って出たラミレス投手コーチ。彼もまた、DeNAキャンプの創意工夫に感心していた。写真:岩国誠

 日本のキャンプでは、どこの球団でも行われている「打廻り」と言われる打撃練習。チームによって異なるが、DeNAでは2ヵ所でフリー打撃、バックネット側では4ヵ所でティー打撃を行っていた。

 私が取材した日は、ソフトボール、硬式球、プラスティック性の軽い球を使って立て続けに連続ティーを行う独特のメニューに、ルーキーの松尾汐恩や新加入の京田陽太らが取り組んでいた。日本人にとっては当たり前の光景だが、初めてその練習を目の当たりにしたライト打撃コーチは、とても感銘を受けたようだった。

 両コーチともに、少しでも新しい知見を得ようとDeNAのコーチたちと積極的にコミュニケーションをとっていた。特にライト打撃コーチと頻繁に話していたのが石井琢朗一軍打撃コーチ。タイトな練習時間の合間に、少しだけ会話の内容を教えてくれた。

「日本の練習方法の違いや考え方の部分にとても興味を持っていましたね。向こうでは環境が整っているので、1つの球場に複数箇所でバッティングするなんてないんですよ。そういう習慣がすごいと。『これが見たかった』と話していました」

 日本の野球、日本のキャンプだけを長い間見続けているだけでは気づけない視点。ガルシア、ライト両コーチの言葉から、限られた環境でも創意工夫を凝らし、選手の成長につなげてきた日本野球の特色を改めて認識させられた。
 
 さらにこんな試みも行っていた。

「(第4クールの)1日だけ、ライトコーチにメニューを決めてもらってティーバッティングをやりましたが、すごく喜んでましたね。他にも打撃投手もやってもらったりしました。向こうと違って、ちょっと距離があるので、難しかったかもしれません。でも、互いにリスペクトしながらコミュニケーションが取れて、いろんな情報交換ができたかなと思います」

 もちろん、自らの学びを得るためだけではなく、両コーチとも選手たちの求めの応じて、身振り手振りを交えながら、熱心にアドバイスを送っていた。

 実際にアドバイスを受けた山崎はこう話していた。
「せっかく来てもらって、僕らの文化に入ってくれているので、精力的に選手も吸収するべきだと思います」

 いいところは吸収し、お互いが成長する。結果がすぐに現れるものではないかもしれないが、双方の球団にとって、3年ぶりとなった今回の人材交流はいい刺激となったのではないだろうか。

 2人が帰国した後、今度は小池正晃一軍外野守備走塁コーチと嶋村一輝ファーム打撃コーチ、そしてチームスタッフ1名がMLBのチーム文化やコーチングなどを学ぶため、ダイヤモンドバックスへ派遣された。常に新しい風を組織的に取り入れているDeNA、人材交流の効果がどのように表れるのか、この先が大いに楽しみだ。

取材・文●岩国誠

[著者プロフィール]
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。
【関連記事】松尾、浅野の高卒大物野手に課せられる数値は!? 12球団ドラ1ルーキーたちの“目標”を考察【セ・リーグ編】

【関連記事】我慢しても使いたい西武・蛭間。二刀流の異才・矢沢はどう見るべき? 12球団ドラ1ルーキーたちの“目標”を考察【パ・リーグ編】

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号