言葉の持つ意味。それは自分の中に軸を作るということだ。何となくの思考が、言葉にすることで自分の中での核心に変わる。ダルビッシュがそれを意図したかどうかはともかくとして、自分の意見を言い合っているうちに考えが整理されているということは選手にとって耐え難い経験と言える
ダルビッシュは終始一貫、WBCに対して、頂点を目指すのだけれども、それ以上に成長のステップとすることを口にしてきた。それが「野球を楽しむ」という言葉に集約されているが、互いに思考し、コミュニケーションを取ることで生まれる何かがあると思っているのだろう。
国内ではエース格の山本由伸(オリックス)もこう話している。
「感覚って言葉にするのは難しいじゃないですか。それを伝えようとすることによって、いつもより脳みそを使っているなと思います。ただ、ダルビッシュさんは知識がたくさんあるので、受け止めてくださっているというのはあるのかなと思いますけど。
ダルビッシュさんが言ってることに確かにそうだなってすごい共感できる話があって、本当にダルビッシュさんの人間性とかもすごい大好きだから、素直に聞き入れる話ばかりをしてもらっています」
会話をするうち、ダルビッシュに気付かされるのだろう。「会話の中に上達の鍵がある」という伊藤の言葉にあるように、コミュニケーションをするうち、選手は思考し、自分の中に芯を作るキッカケをもらっているのかもしれない。
ダルビッシュはもっとも発信力のあるアスリートだ。SNSで自分の意見をどんどん言っていくし、音声アプリ『stand fm』でもLIVEをたびたび開催しファンとの交流を図っている。
これは彼の中に確固たる芯がなければできないこと。発信活動の賜物とも言える。常に思考しているからこそ、たくさんの言葉が出るし、発信するからこそメンタルを強くして、選手として高いステージに向かうことができるのだろう。意見を言うことは人間形成の一つでもあるのだ。
メジャーリーガーのスーパースターになり、それでも偉ぶることなく、チームに溶け込んでいる。充実した日々を送る選手たちからはダルビッシュが作り出した空気感で選手の成長を見ることができた合宿だった。
「(メジャーの)チームから信頼される人って、こういう人なんだと思いました」
少年のような瞳を輝かせた山本由伸の言葉は、チームメイト全員が感じたことでもあるに違いない。
ダルビッシュにたずねた。
メジャーのスーパースターとして世界でリスペクトされているダルビッシュの境地に、我々日本人はどうすれば辿り着けるのだろうか、と。
「自分が特別だと思わないところじゃないですか。ファンの方々も僕らも基本的には同じ(人)なので。確かに自分たちはいろいろ写真撮影とか、サインくださいとか言ってもらえますけど、その価値というのは勝手に周りが作ってくださっているもので、本来の価値というのは生まれた時から変わらないわけじゃないですか、そこに惑わされないで、自分の言動に関しては気を付けるということ」
合宿初日からファンサービスを積極的に行うダルビッシュの姿はとても印象的だった。
最初の頃はサインをしなかった日本の選手たちも、一人、また一人と、ダルビッシュのようにファンの前に立つようになった、
日本の選手たちへ声を掛け、言葉を引き出し、そして行動まで変えた。ダルビッシュがこの合宿で日本に与えたものはとてつもなく大きい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」「stand fm」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
ダルビッシュは終始一貫、WBCに対して、頂点を目指すのだけれども、それ以上に成長のステップとすることを口にしてきた。それが「野球を楽しむ」という言葉に集約されているが、互いに思考し、コミュニケーションを取ることで生まれる何かがあると思っているのだろう。
国内ではエース格の山本由伸(オリックス)もこう話している。
「感覚って言葉にするのは難しいじゃないですか。それを伝えようとすることによって、いつもより脳みそを使っているなと思います。ただ、ダルビッシュさんは知識がたくさんあるので、受け止めてくださっているというのはあるのかなと思いますけど。
ダルビッシュさんが言ってることに確かにそうだなってすごい共感できる話があって、本当にダルビッシュさんの人間性とかもすごい大好きだから、素直に聞き入れる話ばかりをしてもらっています」
会話をするうち、ダルビッシュに気付かされるのだろう。「会話の中に上達の鍵がある」という伊藤の言葉にあるように、コミュニケーションをするうち、選手は思考し、自分の中に芯を作るキッカケをもらっているのかもしれない。
ダルビッシュはもっとも発信力のあるアスリートだ。SNSで自分の意見をどんどん言っていくし、音声アプリ『stand fm』でもLIVEをたびたび開催しファンとの交流を図っている。
これは彼の中に確固たる芯がなければできないこと。発信活動の賜物とも言える。常に思考しているからこそ、たくさんの言葉が出るし、発信するからこそメンタルを強くして、選手として高いステージに向かうことができるのだろう。意見を言うことは人間形成の一つでもあるのだ。
メジャーリーガーのスーパースターになり、それでも偉ぶることなく、チームに溶け込んでいる。充実した日々を送る選手たちからはダルビッシュが作り出した空気感で選手の成長を見ることができた合宿だった。
「(メジャーの)チームから信頼される人って、こういう人なんだと思いました」
少年のような瞳を輝かせた山本由伸の言葉は、チームメイト全員が感じたことでもあるに違いない。
ダルビッシュにたずねた。
メジャーのスーパースターとして世界でリスペクトされているダルビッシュの境地に、我々日本人はどうすれば辿り着けるのだろうか、と。
「自分が特別だと思わないところじゃないですか。ファンの方々も僕らも基本的には同じ(人)なので。確かに自分たちはいろいろ写真撮影とか、サインくださいとか言ってもらえますけど、その価値というのは勝手に周りが作ってくださっているもので、本来の価値というのは生まれた時から変わらないわけじゃないですか、そこに惑わされないで、自分の言動に関しては気を付けるということ」
合宿初日からファンサービスを積極的に行うダルビッシュの姿はとても印象的だった。
最初の頃はサインをしなかった日本の選手たちも、一人、また一人と、ダルビッシュのようにファンの前に立つようになった、
日本の選手たちへ声を掛け、言葉を引き出し、そして行動まで変えた。ダルビッシュがこの合宿で日本に与えたものはとてつもなく大きい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」「stand fm」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。